労働点数(読み)ろうどうてんすう

改訂新版 世界大百科事典 「労働点数」の意味・わかりやすい解説

労働点数 (ろうどうてんすう)

中国の人民公社,農業生産合作社で社員の仕事量と報酬を計算するのに用いた尺度。たとえば,1労働日が10点(労働点数)で1元と計算される。文化大革命期の人民公社では労働点数(工分)の決定方法は,底分活評(労働者ひとりひとりにつき労働力の強弱,技術の高低をもとに基礎点を決め,基礎点と一定時間内で実際に労働した質と量を根拠として評議し,立派な者は点数を加え良くない者は減点),労働定額(農作業を労働の軽重,技術の高低,操作の難易に従って分類し作業ごとのノルマを出す。社員が実際に達成した作業量を標準の質と量を基準にして労働点数を計算),標準工分,自報公議(毎日作業に出たか否かを記録し,月末,期末,年末に労働点数を評議する。標準労働点数を決めそのうえで社員が各人の点数を報告し,皆で評議し民主的な評議をへて公表)が主要なものであった。

 しかるに1979年から農村で生産責任制が導入されるに伴い,従来の労働点数の決定のしかたは変更された。生産責任制の形態は〈包産到戸〉〈包幹到戸〉〈専業承包〉〈定額包工〉〈聯産到組〉〈聯産到労〉等があり,タイプに応じて労働点数の決定のしかたも異なる。生産責任制は,〈包産到戸〉(一戸請負制)と〈包幹到戸〉(一戸経営制)のタイプが主流となり,最終的には〈包幹到戸〉へ移行した。〈包産到戸〉は生産隊が農作業と生産量を各戸に請け負わせ,農地に応じて生産量ノルマを課し,生産量の達成量によって労働点数を決める。ノルマ超過分は生産者の所有とし,不足分は罰金を納める。ノルマ分は生産隊の集団所有となり,統一分配される。〈包幹到戸〉は土地が集団所有制であることを除けば,日本の個人農と同じである。〈専業承包〉は分業請負による生産量リンク報酬計算制で,請け負った生産量,生産価格にリンクして労働点数を計算する。〈定額包工〉は生産隊で労働ノルマをもとに一定の任務を達成した場合の労働点数を計算し,グループ,農家あるいは個人に請け負わせる方式等である。結局,生産責任制の普及は文化大革命時の平均主義的な労働点数の決定の仕方を変更し,経済効率,生産性,農民の労働意欲と結びつけた方法へと改められた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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