労労(読み)ろうろうじ

精選版 日本国語大辞典 「労労」の意味・読み・例文・類語

ろうろう‐ラウラウ‥【労労】

〘形シク〙 (あるいは「ろうろうし」か)
万事について、いかにも心が深く、ゆきとどいたさまである。することが、いかにも心のすぐれた人であることを思わせる。才能・知能がすぐれている。りょうりょうじ。
※大和(947‐957頃)一四二「いとらうらうしく、うたよみたまふことも、おとうとたち宮すむ所よりもまさりてなむいますかりける」
※栄花(1028‐92頃)様々のよろこび「摂政殿の二郎君宰相殿は〈略〉御心ざまいみじうらうらうしうををしう」
容貌や姿などの心配りが隅々までゆきとどいた感じである。上品でこまやかな美しさがある。りょうりょうじ。
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「かたち清らにらうらうしく、年わかきを見給て」
和歌連歌などで、心深く、艷で美しいさまをいう。
※ささめごと(1463‐64頃)上「しな・ゆう・たけ・やせ・さむく・らうらうしく・いはぬ心の匂ひあるは、閑人の口より出づるものなり」
[語誌](1)「らう」にどの漢字を当てるか諸説があり、従来の語源説では「労」とする。一方、同一作品中に「らうらうじ」「りゃうりゃうじ」の両表記を持つ例があって、ラウとリャウの両音を持つ漢字「良」等を当て、さらに、天性智慧才覚心遣いについて用いられることが多いとして、「良」よりも「霊」をとる説もある。なお、「臈」も考えられるが、これは字音としてはラフである。
(2)「りゃうりゃうじ」は、「源氏物語」では、後世の言語感覚が入り込んだとされる系統写本に数例見られるにすぎない。中世の書写者が意味を勝手に推定して拗音の漢字を連想した、あるいはさらに「らうらうじ」とは別語意識で読んだとも思われる。
(3)「らうらうじ」が多用される「源氏物語」では女性または幼少者の、心憎いばかりの心遣い・聰明さを賛美した例が目立つ。その点では、類似した語である「らうたし」「らうあり」の語根「らう」と同一であると見るのが無難であろう。
(4)平安後期以降には、①の挙例「栄花物語」のように男性についても、才覚ある心遣いに用いる例が見られ、また、③のように連歌等の批評語として残されてもいるが、用例は少なく、やがて消滅した。
ろうろうじ‐げ
〘形動〙
ろうろうじ‐さ
〘名〙

ろう‐ろう ラウラウ【労労】

〘形動タリ〙 疲れたさま。疲れて弱っているさま。〔易林本節用集(1597)〕
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)中「らうらうと疲れわびたるごとく也」 〔李賀‐河南府試十二月楽詞・二月〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

普及版 字通 「労労」の読み・字形・画数・意味

【労労】ろうろう(らうらう)

つかれはてるさま。唐・李賀〔帰夢に題す〕詩 家門厚重の 我が腹をかしめんことをむ 勞勞たり、一寸の心 燈火、魚目(涙)を照らす

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