(読み)ロウ

デジタル大辞泉 「労」の意味・読み・例文・類語

ろう【労〔勞〕】[漢字項目]

[音]ロウ(ラウ)(呉)(漢) [訓]つかれる いたわる ねぎらう
学習漢字]4年
精を尽くして働く。骨折り。「労作労賃労働労務労力勤労功労就労徒労不労報労
精が尽きて疲れる。「労苦過労苦労心労辛労足労煩労疲労
ねぎらう。「慰労
「労働者」「労働組合」の略。「労使労農労連
(「ろう」の代用字)すなどる。「漁労
[名のり]つとむ

ろう〔ラウ〕【労】

心やからだを使ってそのことに努めること。また、そのための苦労・努力。ほねおり。「をねぎらう」
長年勤め上げて功労のあること。年功
「勘解由判官の―六年」〈源順集・詞書〉
経験を積んでそのことに巧みであること。熟練。
「おもむけ給へる気色いと―あり」〈藤袴
労咳ろうがい」の略。
[類語]骨折り辛労労力ひとほね小骨苦労労苦苦心腐心辛苦心労煩労艱苦かんく艱難かんなん苦難辛酸ひと苦労

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精選版 日本国語大辞典 「労」の意味・読み・例文・類語

いたわ・る いたはる【労】

[1] 〘自ラ四〙
① あれこれ心づかいをする。骨を折る。苦労する。
書紀(720)舒明即位前(北野本訓)「朕、寡(いやし)く薄きを以て、久しく大業(こと)に労(イタハレ)り」
② 病気で苦しむ。気をやむ。わずらう。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「日ごろいたはる所侍て、院にも内にも参り侍らぬ」
[2] 〘他ラ五(四)〙
① (骨折りに対し感謝の気持をもって)ねぎらう。慰労する。
※書紀(720)欽明二三年六月(寛文版訓)「群庶(もろひと)劬労(イタハリ)、万の民を饗育(やしな)ひたまひ」
② (疾病に対し)手当てを加える。治療する。また、休養する。
※宇津保(970‐999頃)国譲中「いざ、かかる所にて、脚病(かくびゃう)いたはらん」
平家(13C前)四「此ほどあまりに乗り損じて候ひつる間、しばらくいたはらせ候はんとて」
③ (大切なものとして遇する気持をもって)手厚く大事にもてなす。念を入れて丁重に扱う。
伊勢物語(10C前)六九「つねの使よりは、この人よくいたはれといひやれりければ」
④ (弱小の人や苦悩している人に対し同情する気持をもって)やさしく慰める。あわれみをかける。
日葡辞書(1603‐04)「ワランベヲ itauari(イタワリ) ソダツル」
浄瑠璃新版歌祭文(お染久松)(1780)座摩社「何とした小助殿、怪我はないかと(イタ)はれば」
[語誌]上代における確例を欠くが、「石山寺本大方広仏華厳経平安初期点」に「イタハ(ル)こと 労」、「観智院本名義抄」に「労 イタハル」とあり、また「書紀」の古訓に複数例の「労 イタハル」が存するところから、上代から存した可能性も残されている。

いたわり いたはり【労】

〘名〙 (動詞「いたわる(労)」の連用形の名詞化)
① ほねをおること。格別の労力を使うこと。苦労。
源氏(1001‐14頃)松風「何のいたはりもなく建てたる寝殿の」
② ほねをおって、てがらをたてること。功労。
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「其の大造(おほよそ)の績(イタハリ)を建つこと得たり」
③ 人のほねおりをねぎらうこと。慰労。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「殿上人、蔵人などぞ、これかれ御いたはりにて」
④ ねんごろに扱うこと。大事にすること。肝煎(い)り。世話
※宇津保(970‐999頃)内侍督「人の婿(むこ)といふものは若き人などをば、本家のいたはりなどして立つるを」
⑤ あわれみの心をかけること。いとおしみ。慈愛
※宇津保(970‐999頃)沖つ白浪「みかど、殿の御いたはりにて、ゆたかにて」
⑥ 身のわずらい。病気。また、心の痛み。
※宇津保(970‐999頃)吹上下「このあざりにつけ奉れば、かしこくしていたはりやめつ」

ろう ラウ【労】

〘名〙
① 苦労すること。ほねおり。
※源氏(1001‐14頃)蛍「御らうの程はいくばくならぬに、さみだれになりぬるうれへをし給ひて」 〔易経‐兌卦〕
② その職をつとめ上げて、功労のあること。功績。年功。
※順集(983頃)「勘解由判官の労六年」
③ 経験を積んで、その道に巧みであること。慣れていること。熟練。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「やまと琴にもかかる手ありけりと聞き驚かる。深き御らうのほどあらはに聞えておもしろきに」
④ 経験深く、万事に心がよく行き届いていること。すぐれた心づかい。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「おほくの人の中に、心にくくふかきらうなりとみたまふ」
⑤ ねぎらうこと。働きを謝すこと。いたわり。
将門記(940頃か)「愍の労を加ふと雖も、寝食穏からず」

いたずかわいたづかはし【労】

〘形シク〙 (「いたつく(労)」の形容詞化。「いたつかわし・いたずがわし」とも)
① つとめて骨折る。ご苦労千万だ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※徒然草(1331頃)九三「この楽しびを忘れて、いたつかはしく外の楽しびを求め」
② 仕事などで疲れている。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)九「心痛(いた)み、背(せなか)(イタヅカハシク)、骨酸(み)るに肉楚(いた)し」
③ 煩わしい。めんどうだ。〔観智院本名義抄(1241)〕
※仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中「我より上なる人とともなへば、いたづがはしき事のみあって」
いたずかわし‐さ
〘名〙

いたつ・く【労】

(「いたづく」とも)
[1] 〘自カ四〙
① 苦労する。ほねをおる。
※蜻蛉(974頃)上「とかうものすることなど、いたつく人おほくて」
② 疲れる。悩む。病気する。
※大唐西域記長寛元年点(1163)五「教化、労(イタツケ)るかな。末世を開導(みちびくこと)、寔に此れ冀(ねがひ)と為(す)
[2] 〘他カ四〙
① 煩わす。労する。動かす。
② いたわる。大事にする。世話をする。
※伊勢物語(10C前)六九「かくてねむごろにいたつきけり」

ろう‐・する ラウ‥【労】

[1] 〘自サ変〙 らう・す 〘自サ変〙 骨折る。はたらく。苦労する。
※続日本紀‐和銅元年(708)二月戊寅「常以為、作之者労、居之者逸」
※太平記(14C後)三一「先勢の労せぬ前に大敵に打勝なば」
[2] 〘他サ変〙 らう・す 〘他サ変〙
① 骨折らせる。はたらかす。苦労させる。無理に物事をさせる。
※海道記(1223頃)手越より蒲原「身を助として身を労しぬ」
② ねぎらう。なぐさめる。慰問する。

いたつかわいたつかはし【労】

〘形シク〙 ⇒いたずかわし(労)

いたず・く いたづく【労】

〘自他カ四〙 ⇒いたつく(労)

いたわいたはし【労】

〘形シク〙 ⇒いたわしい(労)

ろう‐・す ラウ‥【労】

〘自他サ変〙 ⇒ろうする(労)

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【農具】より

…このような相対立する性格を有するがために,両者における農具の発達,そして機械化への歩みも異なる。農具の発達は農作業の労働能率を高めることになるが,それによって浮いた労働が,集約化してもあまり土地生産性の高まらない休閑農業では,経営を拡大する方向に用いられ,そのことが畜力その他の原動力を利用する機械の発達を促した。一方,中耕農業においては,もともと労働を集約化しなければ農業そのものが成立せず,また労働を集約化すれば土地生産力が格段に高まるから,経営を拡大するよりも,むしろ労働を集約化して人力を利用する道具の発達を促した。…

【耙労】より

…中国古来からの農具。耙は耕起した土を粗砕したり,地中の毛細管を地表面で切断するのに使用され,労は土を細砕し,鎮圧して毛細管をととのえるのに使用する。華北の農業は一般に雨水にたよっているため,地中の水分の可能な限りの利用が望ましい。…

※「労」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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