動員(読み)どういん

精選版 日本国語大辞典 「動員」の意味・読み・例文・類語

どう‐いん ‥ヰン【動員】

〘名〙
軍隊または国家の人的物的資源を戦時の体制に移すこと。軍動員軍需動員及び国家総動員があった。
(イ) 軍動員は陸軍編制を戦時の編制にかえることをいい、海軍では出師(すいし)準備といった。
※師団司令部条例(明治二九年)(1896)八条「動員計画作戦計画に関しては参謀総長〈略〉の区処を受く」
(ロ) 軍需動員は戦時または事変に際し、陸軍の軍需の要求を満たすため、関係工業を平時状態から戦時状態に移すことをいった。昭和一二年(一九三七)一〇月発動。
(ハ) 国家総動員は、有事国防目的達成のため、一切の人的物的資源を統制運用することをいった。昭和一三年(一九三八)五月発動。
※冷え物(1975)〈小田実〉「わたしが動員されていたのはパラシュートをつくっていた工場で」
② 転じて、ある目的のために、人や物をかり出すこと。
※海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉四一「それで、一切は動員された━と云ふ訳であった」
※随筆寄席第二集(1954)〈辰野・林・徳川〉序「想像力、空想力、あらゆる力を動員しなければ」

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デジタル大辞泉 「動員」の意味・読み・例文・類語

どう‐いん〔‐ヰン〕【動員】

[名](スル)
軍隊を平時の編制から戦時の編制に切り替えること。また、そのため兵士を召集すること。「動員されて戦地に赴く」
戦争遂行のために、国内の資源・工場・人員などを政府の管理下におくこと。「学徒動員
ある目的のために、多くの人や物を集めること。「観客を動員する」
[類語]総動員徴集徴用徴兵

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改訂新版 世界大百科事典 「動員」の意味・わかりやすい解説

動員 (どういん)

軍隊,または国家の人的・物的資源を,平時の態勢から戦時の態勢に,あるいは戦時の態勢からさらに強度な臨戦態勢に移すことをいう。旧日本軍では,陸軍はこれを軍動員と軍需動員に分け,海軍では出師(すいし)準備といった。軍動員は,陸軍の編成を平時状態から戦時態勢にすることをいい,軍需動員は,軍の編成・運用に必要な物資の供給,輸送,研究,整備等についての組織と業務を,軍の運用を最も効率的に支援しうるように,戦時の態勢に移すことをいった。海軍では,これらをあわせて出師準備といい,準備の度合に応じて,第1着作業,第2着作業に区分した。科学技術の進歩と戦争様相の複雑化により,近代戦は,平戦両時の区分を明確にしえないようになり,各国ともに,動員がなくても作戦を可能にするため,平時から戦時に近い態勢をとるようになった。しかし,依然として兵力の拡充・補充を円滑にし,また特に軍需物資の運用を効率的にするため,動員の計画を定め,即応態勢をとるのが普通である。なお,国家総動員とは,一切の人的・物的,有形・無形の資源を国防目的達成のため統制運営することをいう。
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百科事典マイペディア 「動員」の意味・わかりやすい解説

動員【どういん】

平時編制の軍隊に,必要な人員,兵器,資材などを充足し,戦時編制に移行させること。近代の戦時兵力の増大に伴い,常備兵力は基幹部分にとどめ,戦時に予後備兵力などを動員するのが一般的となった。→国家総動員法
→関連項目復員

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普及版 字通 「動員」の読み・字形・画数・意味

【動員】どういん

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