勝川春章(読み)かつかわしゅんしょう

精選版 日本国語大辞典 「勝川春章」の意味・読み・例文・類語

かつかわ‐しゅんしょう【勝川春章】

江戸中期の浮世絵師勝川派の祖。俗称は勇助。号は旭朗井、酉爾など。宮川春水の門人。役者絵を得意とし、俳優の個性表現に新味を示して、類型的な鳥居派の画風を一変した。また、武者絵、力士絵を描き、肉筆、版画による美人画にもすぐれた。代表作に「風俗十二月図」「竹林七妍図」など。享保一一~寛政四年(一七二六‐九二

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デジタル大辞泉 「勝川春章」の意味・読み・例文・類語

かつかわ‐しゅんしょう〔かつかはシユンシヤウ〕【勝川春章】

[1726~1793]江戸中期の浮世絵師。勝川派の祖。江戸の人。俗称、祐助宮川春水の門に入り、初め勝宮川と称し、のち勝川と改める。武者絵・相撲絵・美人絵など作品は多いが、特に写実的な表情の役者似顔絵を創始、新生面を開いた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「勝川春章」の意味・わかりやすい解説

勝川春章
かつかわしゅんしょう
(1726―1792)

江戸中期の浮世絵師。宮川春水に師事し、勝宮川(かつみやがわ)と号したが、のち宮川派より勝川派をおこして勝川を画姓とした。俗称を要助、のち祐助といい、別号には旭朗井(きょくろうせい)、酉爾(ゆうじ)、李林(きりん)、六々庵(ろくろくあん)などを用いる。作画期は明和(めいわ)年間(1764~1772)とみられ、役者絵と美人画で独自な勢力を形成した。とくに役者絵は、一筆斎文調(いっぴつさいぶんちょう)とともに当時一流の絵師として評価され、鳥居派による旧来からの形式化した画風を革新し、似顔絵によって写実的な作風を示した。また美人画についても優れた技量を示し、美人画派として画系を保った宮川派の画法を一段と高度なものとした気品ある美人画を描いた。その代表作とされるものは、版本では一筆斎文調との合筆になる『絵本舞台扇』、北尾重政(しげまさ)と合筆の『青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)』などがあり、肉筆画では美人画の『雪月花』(三幅対)、『竹林七妍(しちけん)』『婦女風俗十二ヶ月』(全12幅対、うち2幅は歌川国芳(くによし)が描く)などが知られる。なお、春章門下からは春好(しゅんこう)、春朗(しゅんろう)(葛飾北斎(かつしかほくさい))、春英、春潮などの名手が輩出した。

[永田生慈]

『楢崎宗重編『浮世絵大系3 春章』(1976・集英社)』


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朝日日本歴史人物事典 「勝川春章」の解説

勝川春章

没年:寛政4.12.8(1793.1.19)
生年:享保11(1726)
江戸中期の浮世絵師。名は正輝,字は千尋,俗称要助,祐助。画号はほかに旭朗井,李林,酉爾など。浮世絵師宮川長春の弟子宮川春水に学び,明和(1764~72)前期の錦絵創始期に本格的に画壇に登場した。明和年間は主に鈴木春信らと共に活躍し,美人画では春信に影響を受けた錦絵類を若干数発表した。それと同時に,この時期には一筆斉文調と協力して,歌舞伎俳優の似顔を描く新様の細判役者絵を打ち出し,伝統的な鳥居派役者絵を凌ぐ人気で世に名を成した。いたずらな誇張が少なく優美,繊細で,しかも適確な描写力に裏付けられた春章の役者似顔絵は,当時の浮世絵界に主導的役割を果たし,同時代の他の絵師たちにも多大な影響を与えている。とりわけ安永(1772~81)中期以降,役者絵界は春章とその弟子勝川春好の独壇場となり,円熟した画風で天明(1781~89)中期ごろまで圧倒的な支持を得た。 その一方で,春章は天明前期ごろから次第に肉筆美人画を数多く手懸けるようになり,天明中期までには優婉典雅と評価される美人画様式を確立して,一世を風靡した。宮川派の流れを引くその肉筆画制作の手腕は秀逸で,肉筆美人画において浮世絵界の第一人者とされる。なお,この作画の優れたテクニックは,のちに弟子の葛飾北斎へと受け継がれている。天明期の美人画界は,肉筆画ではこの春章,そして錦絵では鳥居清長という住み分けの構図が成立し,没年に至るまで百花繚乱たる浮世絵黄金時代を代表する大御所として君臨した。

(内藤正人)

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百科事典マイペディア 「勝川春章」の意味・わかりやすい解説

勝川春章【かつかわしゅんしょう】

浮世絵師。宮川春水の門人。一筆斎文調との合作《絵本舞台扇》(1770年刊)以降本格的な作画活動に入る。象徴的表現に安住する鳥居派役者絵の革新を志し,文調とともに写実的表現による役者の似顔絵を創始,役者絵の人気を一躍高めた。肉筆美人画にもすぐれ多くの傑作を残し,《十二ヶ月風俗図》は名高い。勝川派には勝川春英,春好,春潮,春朗(後の葛飾北斎)など幾多の俊才が輩出した。
→関連項目相撲絵

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改訂新版 世界大百科事典 「勝川春章」の意味・わかりやすい解説

勝川春章 (かつかわしゅんしょう)
生没年:1726-92(享保11-寛政4)

江戸中期の浮世絵師。勝川派の祖。江戸の人。名は正輝,字は千尋,通称は要助のち祐助,旭朗井(きよくろうせい),酉爾,李林,六々庵,縦画生などと号した。田所町に住す。宮川春水を師として,画姓をはじめ宮川,のちに勝宮川,さらに勝川と改めた。明和年間(1764-72)の錦絵草創期から活躍を始め,安永年間(1772-81)を中心に,それ以前の鳥居派の類型的な役者絵・芝居絵を排し,個性的な表情をとらえた役者絵,相撲絵で人気を得た。天明初年以降の晩年は肉筆画に主力を注ぎ,《雪月花図》《婦女風俗十二ヶ月図》(いずれもMOA美術館)など美人風俗画に秀作が多い。絵本に一筆斎文調との合作《絵本舞台扇》(1770),北尾重政との合作《青楼美人合姿鏡》(1776)があり,秘画もよくした。すぐれた門人を多く育て,浮世絵界に一大派閥を形成した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勝川春章」の意味・わかりやすい解説

勝川春章
かつかわしゅんしょう

[生]享保11(1726).江戸
[没]寛政4(1792).12.8. 江戸
江戸時代中期の浮世絵師。安永~天明期 (1772~89) に活躍。俗称を祐助,号を旭朗井 (きょくろうせい) ,季林,六々庵ほか。宮川春水の門人で,初め勝宮川,のち勝川と称した。肉筆,版画双方に才筆をふるい,勝川派の祖となる。役者絵 (→芝居絵 ) ,相撲絵,美人画のほか絵本や黄表紙の挿絵にも筆を染める。門人に春英,春好,春潮,春朗 (葛飾北斎) がいる。主要作品『絵本舞台扇』 (一筆斎文調との合作,70) ,『東扇,中村仲蔵』 (東京国立博物館ほか) ,肉筆『雪月花』,肉筆『婦女風俗十二ヶ月図』 (MOA美術館) 。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「勝川春章」の解説

勝川春章 かつかわ-しゅんしょう

1726-1793* 江戸時代中期の浮世絵師。
享保(きょうほう)11年生まれ。勝川派の祖。勝川春水にまなぶ。一筆斎文調とともに写実的な役者似顔絵を創造したほか,「風俗十二月図」など肉筆美人画でも活躍。寛政4年12月8日死去。67歳。名は正輝。字(あざな)は千尋。通称は祐助。別号に旭朗井,李林など。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「勝川春章」の解説

勝川春章
かつかわしゅんしょう

1726~92.12.8

江戸中期の浮世絵師。勝川派の祖。宮川春水の門人で,画姓に宮川・勝宮川も用いた。俗称要助,のち祐助。号は旭朗井・酉爾・李林・縦画生など。像主の個性を描きわけた役者似顔絵をはじめ,1000点をこす役者絵版画を制作したといわれる。晩年は肉筆画に専念し,繊細な筆致で質の高い美人画を数多く残した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「勝川春章」の解説

勝川春章
かつかわしゅんしょう

1726〜92
江戸中期の浮世絵師。勝川派の開祖
役者絵版画に初めて写実をとり入れ,それまでの類型的な鳥居派の様式を破り,のちの役者絵に影響を与えた。また錦絵の発達に貢献。葛飾北斎はその門人である。

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世界大百科事典(旧版)内の勝川春章の言及

【浮世絵】より

…長春は美人立姿の掛幅画にとどまらず,画巻や屛風にこまやかな観察をいきとどかせた風俗描写を展開,人物と衣装,季節の情感を盛る浮世絵肉筆画の良き範例を示した。この派の流れは孫弟子の勝川春章,さらには春章の弟子の葛飾北斎へと受けつがれ,宮川・勝川・葛飾派という浮世絵肉筆画の主流を形成することになる。紅摺絵期の宝暦年間は,美人画の石川豊信,役者絵の鳥居清満(1735‐85)が全盛で,俳趣の濃い詩的な風俗表現が好まれた。…

※「勝川春章」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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