勝浦川(読み)かつうらがわ

日本歴史地名大系 「勝浦川」の解説

勝浦川
かつうらがわ

勝浦郡上勝かみかつ町最奥部に位置するつるぎ山地の雲早くもそう(一四九五・九メートル)東方を水源とし、上勝町と同郡勝浦町を北東へと貫流し、徳島市南東部を北流して同市津田つだ町地区の南で東に折れ紀伊水道に入る。河川延長四九・六キロ、流域面積二二四平方キロの二級河川。途中であさひ(延長八キロ)ふじ(同二・三キロ)たつ(同一〇キロ)八多はた(同五・二キロ)打樋うてび(同二・一キロ)などを合流する。上流―中流は勝浦盆地の白亜系で知られる中生代の地層を深くうがち、曲流・蛇行を繰返し複雑な流路をとる。高位段丘面形成期には勝浦町沼江ぬえ付近から小松島市南部の櫛淵くしぶち立江たつえ方面への東流も認められる。しかし沼江付近で北流に転じる現在の勝浦川は、そのすぐ下に位置する徳島市飯谷いいだに町付近ではチャートからなる固い地質をうがって横谷をつくっている。この横谷部は交通の難所で、「犬返り」「猿返り」などとよばれてきた。飯谷町を抜けたのち現在の流路はさらに北流しているが、かつてはその分流が東流していたとみられ、小松島市街地を流れ神田瀬かんだせ川や芝生しぼう川はその名残でもある。

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改訂新版 世界大百科事典 「勝浦川」の意味・わかりやすい解説

勝浦川 (かつうらがわ)

徳島県中央を北東流し,徳島市南東部で紀伊水道に注ぐ川。雨乞い山で知られる雲早(くもそう)山(1496m),高丸山(1439m)を水源とし,全長49km,流域面積224km2。上中流域は中生界の地層からなる山地で,複雑な地質をもち化石が多い。また勝浦町の横瀬までは穿入(せんにゆう)曲流して峡谷をつくる。1977年上流の上勝(かみかつ)町に多目的の正木ダムが完成し,中流に勝浦発電所も立地する。中流域では谷底平野河岸段丘が発達し,低位面が水田となる。集落は山地斜面に立地し,林業への依存度が強い。中流域の勝浦町坂本は県内のミカン栽培の発祥地で,横瀬にかけての斜面はウンシュウミカンの代表的産地となっている。横瀬から下流の段丘上ではミカンのほか,ハウスイチゴ,洋ラン,シイタケが栽培され,鶏舎への転用も多い。勝浦川は正木ダムにより洪水から免れたが,名物のアユ,アマゴ釣りは消えようとしている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勝浦川」の意味・わかりやすい解説

勝浦川
かつうらがわ

徳島県,剣山地東部に発して,徳島市南部で紀伊水道に注ぐ川。全長約 65km。流域は中世代白亜紀物部川層から成り,化石が多い。中流域の勝浦町の横瀬は,川舟交通時代の高瀬舟終点であった。上・中流域は,文化年間 (1804~18) に温州みかんが導入されたところで,現在は県下一のミカン栽培地。中・下流はアユの釣り場として知られる。

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