化学的酸素要求量(読み)かがくてきさんそようきゅうりょう

精選版 日本国語大辞典 「化学的酸素要求量」の意味・読み・例文・類語

かがくてき‐さんそようきゅうりょう クヮガクテキサンソエウキウリャウ【化学的酸素要求量】

〘名〙 (chemical oxygen demand訳語) 水がどの程度汚れているかを示す基準水中有機物など汚染源となる物質酸化剤酸化するのに消費される酸素の量をppmで表わしたもの。略称COD。

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デジタル大辞泉 「化学的酸素要求量」の意味・読み・例文・類語

かがくてき‐さんそようきゅうりょう〔クワガクテキサンソエウキウリヤウ〕【化学的酸素要求量】

chemical oxygen demand河川水などの汚れの度合いを示す指標の一。水中の有機物などを、過マンガン酸カリウムなどの酸化剤で酸化するときに消費される酸素の量。水1リットル当たりのミリグラム数を測定し、mg/lで表す。値が大きいほど有機物が多く、汚染が進んでいる。COD

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改訂新版 世界大百科事典 「化学的酸素要求量」の意味・わかりやすい解説

化学的酸素要求量 (かがくてきさんそようきゅうりょう)

COD(chemical oxygen demandの略)ともいう。水中の有機物と反応する酸化剤の消費量を酸素当量に換算してmg/lあるいはppm(1mg/l≒1ppm)単位で表示したもので,主として有機物による水質の汚染の指標として用いられる。日本では酸化剤として過マンガン酸カリウム(COD Mnとも表示),欧米では重クロム酸カリウム(COD Crとも表示)を使用,一般にCODCr値のほうがCOD Mn値より高くなる。COD値が高いほど有機汚染が進んでおり,COD Mnで都市下水は約50~100mg/l,生屎尿(なましによう)7000mg/l程度で,工場廃水の場合は含まれている成分によって大きく変化する。

 水の有機物汚染を示す指標には,このほかに生物化学的酸素要求量BOD。biochemical oxygen demandの略),全酸素要求量(TOD。total oxygen demandの略),全有機性炭素量(TOC。total organic carbonの略)がある。TODは,試料水を高温白金触媒下で燃焼させ,それに必要とした酸素量を直接測定するもので,酸化剤を用いる場合より完全な酸化が行われるため,CODよりも高い(正しい)値を示す。COD,TODとBODは共通して酸素量で表示されることから,値の大小を直接比較することによって,有機物の性質がある程度わかる。すなわち,BOD値は微生物によって分解可能な有機物を測定したものであるから,BODと,CODやTODとの比が高ければその水は生物分解可能な有機物を多く含み,逆に低ければ難生物分解性物質を多く含むことを意味する。TOCは,試料水中の有機物を高温コバルト触媒下で燃焼させ,発生した炭酸ガス量を測定して求めるもので,有機物の炭素分に着目した有効な測定法である。
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化学辞典 第2版 「化学的酸素要求量」の解説

化学的酸素要求量
カガクテキサンソヨウキュウリョウ
chemical oxygen demand

略称COD.生化学的酸素要求量(BOD)とともに水の汚染度を示す指標とされている.水中の有機性物質を酸化する際に消費される酸化剤の量を酸素量に換算したものをいい,湖沼,排水中の有機汚濁物質量を示す代表的な指標である.単位は ppm あるいは mg L-1.数値が大きいほど,有機汚濁物質量が多いことを示す.酸化剤としては,過マンガン酸カリウムKMnO2あるいは二クロム酸カリウムK2Cr2O7が用いられる.JIS水質検査法では,100 ℃,30 min における過マンガン酸カリウムの消費量を酸素消費量に換算した値をCODとして示す.測定は,試料水へ過マンガン酸カリウムの一定過剰量を加え,酸性にした後,沸騰水浴中で30 min 加熱する.ついで残留している過マンガン酸カリウムにシュウ酸ナトリウム一定量を加え,還元脱色し,さらに過マンガン酸カリウム溶液で逆滴定して,過マンガン酸カリウムの消費量を求める.水中の有機性物質としては,炭素質は比較的酸化されやすいが,窒素質は酸化されにくい.湖沼,海域では環境基本法にもとづき1~8 ppm の基準値が定められている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化学的酸素要求量」の意味・わかりやすい解説

化学的酸素要求量
かがくてきさんそようきゅうりょう
chemical oxygen demand; COD

有機性汚濁物質をはかる指標であり,この値が大きいほど水質汚濁が進んでいる。検水に酸化剤を加えて反応させ,消費した酸化剤の量から酸化に要した酸素の量を計算する。その酸素の量が CODである。測定値はやや精度が低いが,生物化学的酸素要求量 BODよりも短時間で測定できる。測定方法は幾通りかあり,高温法と低温法,酸性法とアルカリ性法,重クロム酸カリウム法と過マンガン酸カリウム法との区別があり,また測定時間や酸化剤の濃度によっても異なる。湖沼水や海水また工場排水は,過マンガン酸カリウムの酸性法により 100℃の高温で,酸素消費量を測定する方法が使われる。この方法は総量規制の測定法を使用している (日本工業規格 K0102・工場排水試験法) 。 CODでは,酸化されやすい無機物が一部測定されるが,ほぼ有機物が主体になっている。いずれにしても測定条件が明示されていないと測定値が比較できない。

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百科事典マイペディア 「化学的酸素要求量」の意味・わかりやすい解説

化学的酸素要求量【かがくてきさんそようきゅうりょう】

COD(chemical oxygen demandの略)とも。水質基準の尺度。水中の被酸化性物質(おもに有機物)を酸化剤によって化学的に酸化した際に消費される酸素量を酸素当量に換算し,ppmまたはmg/l(1ppm≒1mg/l)で示す。水が汚染されていれば,それだけCODが高い。水の汚染を示す指標にはこの他に生物化学的酸素要求量(BOD)がある。
→関連項目湖沼法

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知恵蔵 「化学的酸素要求量」の解説

化学的酸素要求量

水中の有機物を酸化剤で酸化するのに消費される酸素の量。有機物が多いほど酸化のために必要な酸素量も多く、水の汚染度を示す数値となる。単位はppmで、1ppmは1lの水の中に1mgの酸素が必要なことを表す。環境基準では湖沼、海域の汚濁指標として採用されている。湖沼で最も厳しい基準は1ppm以下。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

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栄養・生化学辞典 「化学的酸素要求量」の解説

化学的酸素要求量

 水質汚濁の指標の一つで,水中にあって酸化可能な物質を無機酸化物およびガスにするために必要な酸素量として表す.過マンガン酸カリウムによる酸化を行うのが一般的.

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世界大百科事典(旧版)内の化学的酸素要求量の言及

【富栄養化】より

… 富栄養化によりもたらされる水質や水生生物の変化は,水域を利用する人間に不利益をもたらすことが多い。とくに植物プランクトンの増殖は有機汚濁度の指標としてのCOD値(化学的酸素要求量)を高め,またその分解で水中の溶存酸素の低下を招くので,水質の有機汚濁化の一つとみなされることもある。 富栄養化の進行にあずかる栄養塩のうち最も重要なものは,窒素とリンである。…

※「化学的酸素要求量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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