北京オリンピック(読み)ぺきんおりんぴっく(英語表記)Beijing Olympic Games

知恵蔵 「北京オリンピック」の解説

北京オリンピック

2008年8月8日から同月24日まで、北京で開催された第29回夏季オリンピック。東京(64年)、ソウル(88年)に続いて、アジアでは3回目の夏季五輪である。「発展途上国初の五輪」に加え、「東西文化の交流」「緑の五輪」「節約型五輪」をうたっていたが、何よりも経済発展めざましい中国の国威発揚の一大イベントとなった。その象徴と言われるのが、チャン・イーモウ総監督が指揮した開会式である。人海戦術による壮大で絢爛(けんらん)豪華な演出は、中国の躍進繁栄を世界中にアピールしたが、放送の一部にCG映像を使っていたことやソロを歌った少女が「口パク」だったことなどが分かり、中国の実と虚を映し出す結果となった。01年に開催が決まって以来、中国政府が最も力を注いだのは、北京市のクリーン化とテロの防止である。大会前、当局は北京旧市街を解体・整備し、市内に住む100万人もの民工(出稼ぎ労働者)を帰郷させた。開会式前日には「人工消雨」作戦を展開。計1104発のロケット弾を発射し、北京近郊に人工的に雨を降らせてしまい、開会式に雨が降らないようにした。期間中は、史上最多約40万人の警備(ボランティア約30万人を含む)を動員。チベット解放などを訴える反政府デモを禁じ、危惧(きぐ)されていたウイグル過激派によるテロなども封じ込めた。閉会翌日、中国各紙は「過去に例をみない五輪」と絶賛したが、アメリカを抜いて最多となった金メダル数(51個)については、控えめな評価にとどめている。これは、「民族意識愛国心を過度にあおらないこと」という中国政府の意向を反映したものと見られる。欧米メディアも、大会運営には高い評価をあたえながらも、当局が外国人記者のインターネット接続を制限したこと、複数の外国人記者の身柄を拘束したことなどを挙げ、言論の自由や人権問題が改善されなかったことを批判している。

(大迫秀樹 フリー編集者 / 2008年)

北京オリンピック

2001年7月13日、モスクワで開かれたIOC総会で、08年の第29回夏季大会開催都市に、中国・北京が選ばれた。ソルトレークシティー・オリンピックを決定する際のIOC委員の招致疑惑により、08年のオリンピック開催都市の選定には、IOC委員の個人的な現地訪問は禁止され、10人前後の評価委員会のみが視察する方式となった。北京は2位のトロントに大差をつけて選ばれ、東京(1964年)、ソウル(88年)に次いでアジアで3番目の夏季大会開催地となる。北京市の北部のオリンピック公園を中心に開催され、開会式の開幕は、2008年8月8日午後8時と、中国人にとって福を呼ぶとされる「8」並びの日時に行われることになった。スタジアムはスイスの建築家ジャック・ヘルツォーク、ピエール・ド・ムーロンと、中国建築設計研究院の合同プランで、鳥の巣を模した斬新なデザイン。観客席は自然換気と自然光を活用、地熱を利用した冷暖房施設、競技施設内の水は雨水利用、場外の照明はソーラーシステムにするなど、環境に配慮した設計が予定されている。「一つの世界、一つの夢」が大会のスローガン。魚、パンダ、チベットカモシカ、ツバメ、聖火を模したマスコット・キャラクターは、北京への歓迎を意味している。

(真田久 筑波大学准教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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