北朝鮮覚せい剤密輸(読み)きたちょうせんかくせいざいみつゆ

知恵蔵 「北朝鮮覚せい剤密輸」の解説

北朝鮮覚せい剤密輸

警視庁海上保安庁などの合同捜査本部が2006年5月、韓国籍の男(当時59)と暴力団組長(当時58)を、北朝鮮から覚せい剤を大量に密輸したとして覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で逮捕した。02年10月9日、北朝鮮から貨物船で覚醒剤数百kgを運び、島根県の安来港に接岸して日本に密輸したとされる。韓国籍の男が北朝鮮との窓口となって覚せい剤を調達し、これを組長がほかの暴力団関係者にさばいているとみられる。北朝鮮からの密輸は警察が確認しただけでも1997年から02年までに計7件ある。手口は似通っており、大型船で運んできた覚せい剤をポリ袋などに包んで洋上に落とし、これを漁船などを使って回収する「瀬取り」と呼ばれる手法で、海が荒れていると回収に失敗することもある。01年12月に鹿児島・奄美沖で、海上保安庁の巡視船との銃撃戦の末に沈没した北朝鮮工作船から見つかった携帯電話には、韓国籍の男や組長の事務所と通話した記録が残っていた。この事件では、共犯容疑で数人が逮捕されたが、容疑者の中には「北朝鮮にある工場で覚せい剤をつくっている、と聞いた」と供述する者もいる。押収した覚せい剤の成分がほぼ一致していたこともわかり、警察庁は06年7月、「北朝鮮が国家として覚せい剤密輸に関与した」と断定。北朝鮮からの覚せい剤は、不純物が少ないことで知られ、常用者には人気が高い。取り締まりが強化された近年は、日本に入る量が激減したため価格高騰、06年に入ってからの卸値は1kg当たり1000万円を超える取引もあるという。

(緒方健二 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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