ヨーロッパとアジアを北極海を通って結ぶ船舶航路。かつて北極海は年間を通じて凍結していたため航行できなかったが、地球温暖化などの影響で夏期に氷が解けるようになったため、本格的な商業利用が現実味を帯びてきた。北極海航路を利用したヨーロッパと日本の主要港間の航行距離は1万2000~1万3000キロメートル。スエズ運河経由(約2万キロメートル)やケープ・タウン経由(約3万キロメートル)より短く、輸送時間の短縮や使用燃料の大幅節減を実現できる。国際紛争や海賊出没などの問題があるマラッカ海峡やソマリア沖などを運航しなくてすむ利点もある。また、地球上の未発見資源のうち、天然ガスの30%、原油の13%が北極海に存在すると推計されており、北極海航路が実現すれば、世界の海運経路が一変するだけでなく、世界規模の資源開発が進むと期待されている。
北極海航路は大航海時代から構想があったが、1878年、蒸気船ベガ号がスウェーデンから北極海を経て日本の横浜港へ着いたのが、初の航行とされる。1990年代には日本やロシア、ノルウェーが共同で、北極海航路の経済性や国際法のあり方、氷海用船舶設計などを研究したが、その後、大きな進展はなかった。しかし海氷の減少もあって、2011年にロシアのプーチン首相が北極海航路を世界的な海運経路として整備するよう指示するなど、欧米諸国が関心を寄せている。
2011年(平成23)には、三光汽船の貨物船が日本の商船として初めて、大西洋から北極海航路経由で太平洋に出ることに成功した。極東アジアのハブ港の地位は、韓国の釜山(ふざん/プサン)港が占めているが、北極海航路が商業利用できれば、日本海側の日本の港がハブ港の地位を奪回できるのではないかとの期待がある。しかし北極海航路が利用できる期間は現在、夏場の数か月に限定されるうえ、商業船舶の航行には砕氷船を先導させる必要があり、氷海用の特殊な船舶構造が必要となるなど、実用化にはさまざまな課題もある。
[編集部]
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