医療クラウド(読み)いりょうくらうど

知恵蔵 「医療クラウド」の解説

医療クラウド

様々な医療サービスをクラウド経由で必要な時に活用しようとする試み。クラウドとは、インターネットに接続されているコンピューター上のデータやソフトウエアサービスを、手元にあるパソコンやスマートフォン、タブレットで利用できる仕組みであり、今後、あらゆる分野のICT(情報通信技術)サービスにおける基盤として主流となる技術である。
2010年2月、厚生労働省から、「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正が発せられ、民間企業が保有するデータセンターへの医療情報の外部保存が認められた。同省では、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの整備や、医療情報の標準化等を進めている。14年7月には、政府の健康、医療戦略において、「医療・介護・健康分野のデジタル基盤の構築・利活用の推進」が掲げられ、総務省でも、ICTの活用による在宅医療、介護等分野での情報連携モデルの実証事業を行ってきた。両省では、異なる地域医療連携システム間の相互運用性検証や、在宅医療介護連携にかかる実証事業を連携して実施している。
クラウド上に電子カルテがあれば、特定患者のデータを、異なる地域の複数の医療機関で共有できる。したがって、災害時などでも、被災地以外の医療機関で、患者の過去の治療歴等を知ることができる。また、クラウドで管理されているX線写真やMRI画像を基にした遠隔画像診断も可能となる。16年4月には電子処方箋(しょほうせん)が認められたため、医療機関と薬局での情報共有が容易になり、医師が実際の調剤実施情報を把握したり、薬剤師が、患者のアレルギー情報や手術歴などの付帯情報を得られたりすることで、これまで以上に、患者に適切な薬の提供が可能となっている。
ちなみに、市場調査・コンサルティング会社「シード・プランニング」によると、14年に179億円程度だった医療クラウドに関するサービスの市場規模が、24年には、10倍の1792億円にまで拡大すると予測されている。

(横田一輝 ICTディレクター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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