南宗(読み)なんしゅう

精選版 日本国語大辞典 「南宗」の意味・読み・例文・類語

なん‐しゅう【南宗】

〘名〙
① 仏語。
(イ) 禅宗一派慧能(えのう)系統をいう。その栄えた地に基づく名で、北宗が漸漸修証を主とするのに対して、南宗は頓悟成仏を主とする。日本に伝えられた禅宗はこの流派。南宗禅。南禅。
神皇正統記(1339‐43)中「異朝には南宗の下に五家あり」 〔金剛経纂要刊定記‐四〕
(ロ) 江南諸宗江北の諸宗に対していう。〔法華玄義釈籤‐一九〕
随筆・玉洲画題(1790)「南宗と申候は、古の王公士大夫及高人雅士の画報にて御座候」 〔莫是龍‐画説〕

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デジタル大辞泉 「南宗」の意味・読み・例文・類語

なん‐しゅう【南宗】

中国禅宗の一派。唐の慧能えのうが開き、主として中国江南地方に行われた。日本の禅宗はこの系統。南禅。
南宗画」の略。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南宗」の意味・わかりやすい解説

南宗
なんしゅう

中国禅宗で,慧能の系統の禅宗をいう。中国禅は達磨初祖として第五祖弘忍までは一直線に伝承されたが,弘忍門下から神秀,慧能の2人のすぐれた禅僧が出,禅の流れが2つに分岐した。慧能は弘忍から印可証明を得て法を継ぎ,衣鉢を受けて南の地域に行き,そこに禅を広めたので南宗禅という。神秀は弘忍のもとを去り,北の地域でみずから正しいとする禅を広めたので北宗禅という。南宗禅は「生活の禅」,北宗禅は「思索の禅」といえる。

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世界大百科事典(旧版)内の南宗の言及

【画論】より

…この時代はおおむね文人画主流の時代であり,文人画論は,銭選の隷体論,倪瓚(げいさん)の逸筆草草論,何良俊の利家・行家論を経て,明末の莫是竜・董其昌の南北宗論に至り極まった。南北宗論は,中国絵画を南宗と北宗に分け,南宗の正統性を論じたが,南宗はまた文人画でもあった。この説はひじょうに流行し,以後の画論はことごとくこれを踏襲し,倣古形式主義を醸成したが,石濤《苦瓜和尚画語録》はこれを批判し,逆に独創を主張した。…

※「南宗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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