南条踊(読み)なんじょうおどり

改訂新版 世界大百科事典 「南条踊」の意味・わかりやすい解説

南条踊 (なんじょうおどり)

民俗芸能で,風流(ふりゆう)踊の一種。山口県岩国市・長門市,広島県山県郡北広島町の旧大朝町新庄などに伝承される。室町時代末期に盂蘭盆会(うらぼんえ)の踊りとして流行した風流踊は,若者が仮装して踊るのが特色の一つであり,戦国武将の敵城侵入の手段に用いられたと伝える。南条踊も旧大朝町新庄の地に居城した吉川(きつかわ)元春が,天正年間(1573-92)伯耆ほうき)の南条元次を攻略するときにこの手段を用い,踊子を城内に送って勝利をおさめたという。以来,その踊りが虫送りの行事と結びついて伝承された。1601年(慶長6)吉川氏の岩国移封にともない,その藩士子弟が伝承し,のち長門市深川(ふかわ)の赤崎神社でも行うようになった。岩国では紋付黒筒袖にたすき,白鉢巻,袴姿の青年が太刀を帯して踊るが,大朝町新庄では破れ芭蕉の作り物を立て,陣笠,陣羽織姿の太鼓踊で7月13日に行われる。音頭の歌う風流踊歌や,輪踊の芸態は3ヵ所とも共通で,風流踊の古態を残す。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南条踊」の意味・わかりやすい解説

南条踊
なんじょうおどり

風流(ふりゅう)系の太鼓踊。広島県山県(やまがた)郡北広島(きたひろしま)町新庄(しんじょう)、山口県岩国市、同長門(ながと)市湯本(ゆもと)に伝承されるが、曲目、振りは異なる。新庄の城主吉川元春(きっかわもとはる)の軍が伯耆(ほうき)(鳥取県)羽衣石の南条氏の城を攻めたとき、踊り子扮装(ふんそう)させて城内に入れ勝利を収めたことにちなむ踊りと伝えられる。のち新庄から岩国に、そして湯本にも移し伝えられたという。湯本では9月9、10日の赤崎神社の祭礼に奉納される。その構成は大掛りで、丸に十文字骨組を紙の房で飾った吹貫(ふきぬき)持ちが2人、太鼓打ち2人、ささら引き2人、鉦(かね)打ち童子2人、新発意(しんぽて)1人を中踊として、周りを側踊(かわおどり)28人が取り巻く。踊りは道行と本踊からなる。

[萩原秀三郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南条踊」の意味・わかりやすい解説

南条踊
なんじょうおどり

風流踊の一種。広島県北広島町新庄,山口県岩国市,同県長門市湯本に伝わる。岩国では虫送りに踊られていたものが岩国藩の吉例踊となり,慶事の際の踊りともなった。拍子木を持った音頭が小歌をうたい,笛,太鼓,鉦 (かね) の拍子に合わせ,武士風の衣装の踊り手が円陣を組んで踊る。

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