単純性腎嚢胞(読み)たんじゅんせいじんのうほう(英語表記)Simple Cyst of the Kidney

六訂版 家庭医学大全科 「単純性腎嚢胞」の解説

単純性腎嚢胞
たんじゅんせいじんのうほう
Simple renal cyst
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 片側あるいは両側腎臓に1~数個の嚢胞(嚢胞液という液体が詰まっている袋)ができる病気です。通常は無症状でほとんど問題になりませんが、嚢胞による圧迫症状や高血圧水腎症、血尿を来す時は、嚢胞液を穿刺吸引後にアルコールなどで固定したりするなどの外科的処置が必要となることもあります。

原因は何か

 ネフロン閉塞や起因する嚢胞、あるいは遠位尿細管や集合管の小憩室が成長したものなどが原因として考えられています。単発あるいは多発性の嚢胞が加齢とともに増加し、60歳以上ではしばしばみられます。

症状の現れ方

 孤立性の大きな嚢胞ができた場合は、時に圧迫症状を呈することもあります。また腎盂(じんう)の近くにできたものは水腎症(すいじんしょう)を来しやすく、水腎症を起こすと尿が停滞し、腎盂は腫大して嚢状となります。腫大した腎盂により腎実質が圧迫されると、次第に腎実質が薄くなり(乏しくなり)、腎機能障害が生じます。

検査と診断

 腎がん腎嚢胞に合併したり、腎がんが嚢胞化することがあります。悪性腫瘍を否定するために、CT超音波検査を行います。

 悪性腫瘍が疑われればMRI、血管造影、嚢胞穿刺(せんし)(針を刺す)による組織診断を行います。良性の単純性腎嚢胞と診断がつき、症状がなければ経過をみます。

治療の方法

 圧迫症状、高血圧尿路の閉塞などがあれば、外科的切除、開窓術、経皮的穿刺による吸引固定、腹腔鏡下嚢胞切除(ふくくうきょうかのうほうせつじょ)などが行われます。

病気に気づいたらどうする

 健診や他の病気で医療機関を受診した際に、偶然発見されることが多いようです。病気に気づいたら、泌尿器科専門医の診察を受けてください。

来栖 厚

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「単純性腎嚢胞」の解説

たんじゅんせいじんのうほう【単純性腎嚢胞 Simple Cyst of the Kidney】

[どんな病気か]
 腎臓(じんぞう)の組織(腎実質(じんじっしつ))内に、液体のつまった小さな袋(嚢胞(のうほう))ができている状態をいいます。ふつう、嚢胞は片方の腎臓に1個または2~3個ありますが、両側の腎臓に多数あることもあります。
 嚢胞は少しずつ大きくなりますが、圧迫による腎実質への影響はほとんどなく、腎不全(じんふぜん)にはなりません。
 生まれつきのものと考えられていますが、遺伝性はありません。
[症状]
 大きな嚢胞は、まわりを圧迫することによって、軽い胃腸症状をおこすこともあります。しかし、多くの場合、症状はありません。
[検査と診断]
 症状がないことが多いので、ほかの病気で、腹部の超音波検査やCTスキャンをしていて発見されることが多くなっています。
 静脈性腎盂撮影(じょうみゃくせいじんうさつえい)などの検査で腎臓の腫瘤(しゅりゅう)が疑われたときは、嚢胞か悪性腫瘍(あくせいしゅよう)か、みきわめることが必要です。
 そのために、腎臓のCTスキャン、MRI、血管造影などが行なわれます。
[治療]
 嚢胞が大きくなって、まわりの臓器を圧迫している症状があったり、嚢胞か、がんか診断がはっきりしない場合には、治療をします。
 超音波検査の画像で、嚢胞をみながら、背中から細い針を刺し、特殊な管(カテーテル)を入れ、嚢胞内の液体を抜き、かわりに無水エタノールを注入して、再び回収する方法が行なわれています。
 一過性の顔面紅潮(がんめんこうちょう)、針を刺したところの痛み、発熱などがみられることがありますが、いずれも軽度です。
 針を刺して液体を抜くだけでは、すぐ再発してしまいます。また、液が透明でなかったら、液の詳しい検査(細胞診(さいぼうしん)など)が必要で、その結果によっては手術になることもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「単純性腎嚢胞」の意味・わかりやすい解説

単純性腎嚢胞
たんじゅんせいじんのうほう
simple renal cyst

孤立性腎嚢胞,あるいは単に腎嚢胞ともいう。液体を含む嚢が腎臓内にこぶのように発生するもの。数は原則として1個であるが,数個のこともある。 60歳代の男性に多い。画像診断法の進歩により診断が容易になった。無数に発生するものは嚢胞腎という。症状は軽く,側腹部の痛み,腰痛が主で,大きくなると腫瘤を触れる。腎臓の機能が侵されることはまれである。治療は針を刺して内容を吸引するが,再発しやすい。根治させるには手術が必要。

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