印パ核実験(読み)いんぱかくじっけん/いんどぱきすたんかくじっけん

知恵蔵 「印パ核実験」の解説

印パ核実験

1998年5月、インドとパキスタンが相次いで断行し、「ヒンドゥー核とイスラム核の悪夢」として世界を揺るがした核実験。まず、インドが5月11、13日に西部ラジャスタン州のポカラン砂漠で計5回の地下核実験を実施した。74年以来24年ぶりの核実験だった。これに対抗し、パキスタンが5月28、30日に西部のバルチスタン州チャガイ丘陵で計6回の地下核実験を行った。両国とも過去十数年にわたって核疑惑が指摘されてきたが、核開発の経験が浅い国でも核兵器を保有できることを示した。インドの核実験は、98年の総選挙で政権を握ったインド人民党選挙公約の実施だった。人民党は「中国やパキスタンの核の脅威があるのに、インドが核兵器導入を禁止される理由はない」と主張していた。一方、パキスタンは71年の第3次印パ戦争で敗れ、74年のインド核実験後、開発を進めてきたが、歴代首相は表向き核開発の疑惑を否定していた。両国とも国内世論は核実験を支持し、国際社会の世論と大きな違いを見せた。両国は核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)に未加盟で、大国の核独占体制に波紋を投げかけた。日米など先進諸国は両国に経済制裁を実施したが、目に見えた効果はなかった。結局、2001年9月11日の米同時多発テロ後、印パ両国を反テロ戦争の拠点と考える米国意向が働き、制裁解除が方向づけられた。

(竹内幸史 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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