印文土器(読み)いんもんどき

精選版 日本国語大辞典 「印文土器」の意味・読み・例文・類語

いんもん‐どき【印文土器】

〘名〙 表面に幾何学的な文様をおした土器。紀元前一〇世紀頃、中国の殷(いん)、周文化と漢文化の間に栄え、遼東半島からインドシナ付近まで分布。器壁をたたいてかためた板面の彫刻によって、山形文、方格文、渦文などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「印文土器」の意味・わかりやすい解説

印文土器 (いんもんどき)

中国の南東沿海地方,江蘇安徽浙江・江西・福建広東広西の諸省に分布する先史時代から戦国時代ごろまでの土器。中国では印文陶yìnwén táoという。各種の文様を彫りつけた叩き板で土器の外面をたたいて成形した土器の総称で,一般の縄蓆文土器と区別して幾何印文土器とよばれる場合もある。1914年に広東省で発見され,印文土器文化とよばれたこともあるが,各地の資料がととのうにつれ,湖熟文化(江蘇),馬橋文化(上海),呉城文化(江西)など地方ごとに区分する方向にある。無釉土器,施釉土器,原始磁器の区別があり,無釉土器は軟質と硬質に分かれる。印文硬陶とよばれる硬質土器はカオリン土を用い,950~1050℃で焼成されたものと推定されている。文様は,斜格・方格・網目・籠目などの幾何学文のほか,殷周青銅器の雲雷文,渦巻文などを含む。呉城文化では中原式の土器や青銅器が伴う。馬橋文化では,煮炊き土器と食器とで印文の文様が異なり,それとは別に銅器を模倣した土器があり,雲雷文,魚・鳥文をスタンプしている。初期の生産工具は主として石器で,ごく少量の銅器が混じるが,春秋時代以降,南方式の銅器が伴う。編年は地方によって異なるが,湖熟文化では5期に編年され,第1期は西周前期に,第5期は春秋後期に並行する時期に位置づけられている。広東地方では,戦国時代に終末をおいている。印文土器をのこした民族については,異論が多いが,古越族をあてる点で一致している。しかし,越族は百越とよばれるほど多数の支族に分かれており,それぞれをどの文化に比定するかについては,今後の問題である。戦国時代以降も,江南地方に印文土器は残存し,漢代には福建・広東・広西で発達し,ベトナム台湾にまでおよんでいる。呉・西晋時代に浙江地方で成立する古越磁母体に考えられている。
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百科事典マイペディア 「印文土器」の意味・わかりやすい解説

印文土器【いんもんどき】

新石器時代末から代ごろ,中国東南部沿海地方で盛行した先史土器。壺形を中心とする土器を成形しながら,木製陶製の棒で押したりたたいたりして幾何学文様をつけたもの。

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