卵巣がん

EBM 正しい治療がわかる本 「卵巣がん」の解説

卵巣がん

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 卵巣(らんそう)に発生するがんが卵巣がんです。腫瘍(しゅよう)が小さい場合でも卵巣を支える靱帯(じんたい)がねじれて血流がとだえることで、急激な激しい腹痛を引きおこすことがあります。腫瘍が大きくなると、腹部に圧迫感や膨満感(ぼうまんかん)を感じる、しこりが触れる、尿がでにくくなるなどの症状がでます。さらに、腹膜(ふくまく)にがんが広がると、腹水(ふくすい)がたまります。症状がでにくいため、約7割の人が、リンパ節や他の臓器に転移がある状態で診断されます。
 患者さんの年齢や状態、考え方、病期の進行度によって、手術療法化学療法および症状に対する緩和(かんわ)療法を組み合わせて治療を行います。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 卵巣がん患者さんの5~10パーセントで遺伝性の関与が推測されます。遺伝子の異常として、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因であるBRCA1(breast cancer gene Ⅰ)、BRCA2(breast cancer gene Ⅱ)などがあります。また、初潮年齢が早いこと、高齢での妊娠、遅い閉経、ホルモン補充療法を行っていることなどが、卵巣がんのリスクとして報告されています。経口避妊薬の内服はリスクを減らすと報告されています。(1)
 なお、腫瘍マーカー超音波検査など、いずれの検査でも、卵巣がんの死亡率を低下させる効果はみとめられなかったと報告されています。また、偽陽性(ぎようせい)(まぎらわしい所見のため、がんでないのに手術を受けてしまう)などの問題が指摘されました。このため、がん検診としては推奨されていません。(2)~(4)

●病気の特徴
 日本で卵巣がんにかかった人は2011年で9,314人、2013年の死亡者数は4,717人でした。年齢としては、40歳代から60歳代に多いと報告されています。(5)(6)


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]初回腫瘍減量手術を行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 卵巣がんと診断された場合、初回腫瘍減量手術によって、できるだけ腫瘍の量を取り除き、がん細胞の種類と病期を確定します。(7)(8)
 初回腫瘍減量手術後に、抗がん薬療法を行うことが一般的です。抗がん薬療法の後におなかをあけて腫瘍を減らす再度開腹手術については、有効性が証明されていません。(9)

[治療とケア]化学療法を行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] ごく初期の、ある種類の卵巣がんを除いては、手術後に化学療法を併用したほうがよいことが報告されています。(10)
 化学療法には、抗がん薬療法と分子標的療法があります。患者さんの年齢や状態と病期にあわせて、抗がん薬の種類や量を調整します。がんが広がっている場合は、手術の前に抗がん薬を使用して切除する部分を減らすこともあります。(11)


よく使われている薬をEBMでチェック

抗がん薬
[薬用途]TC療法など(12)(13)
[薬名]パラプラチン(カルボプラチン)+タキソール(パクリタキセル)
[評価]☆☆☆☆☆
[薬用途]CAP療法など(14)(15)
[薬名]エンドキサンP(シクロホスファミド水和物)+アドリアシン(ドキソルビシン塩酸塩)+ランダブリプラチンシスプラチン
[評価]☆☆☆☆☆

[評価のポイント] がん細胞を壊したり増殖を抑える効果のある薬剤を、定期的(3週間おきなど)に点滴で投与します。腹腔内に直接抗がん薬を注入する方法もあります。これらの抗がん薬によって、増殖速度の速いがん細胞のほうが健康な細胞よりも壊され、健康な細胞は次の治療の日までに回復してきます。このサイクルをくり返し、残ったがん細胞をできるかぎり体のなかから減らすという治療法です。抗がん薬療法では、健康な細胞も薬の作用を受けます。このため、強い副作用を各種の方法でコントロールしながら、治療を行う必要があります。とくに腹腔内への投与は効果が高いものの副作用も強く、治療として使えるかどうか、体の状態をみながらの慎重な検討が必要です。初回腫瘍減量手術後の初回化学療法、再発や転移がある場合のそれぞれについて、抗がん薬の組み合わせごとに効果が証明されています。ここで紹介しているのは抗がん薬の組み合わせの一例です。
 現在のところ、効果のみられた抗がん薬でも、使用しつづける(維持療法)ことで予後の改善を証明できた薬はありません。(16)

分子標的薬(17)(18)
[薬名]アバスチンベバシズマブ)ほか
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 初回化学療法時や再発療法時に、抗がん薬との併用で、病気の進行を抑える効果が報告されています。しかし、予後の改善は証明されていません。高血圧やたんぱく尿、血栓(けっせん)などの特殊な副作用とのバランスを考慮にいれて使用する必要があります。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
有効な検診方法は現在のところない
 腫瘍マーカーや超音波検査など、いずれの検査でも予後の改善を期待できる効果が認められていません。有効な予防法、早期発見の手段がないがんの一つです。
 卵巣がんのリスクとして、初潮年齢が早いこと、高齢での妊娠、遅い閉経、ホルモン補充療法を行っていることなどがあげられます。5~10パーセントの患者さんに遺伝性の関与があると推測されています。

できるだけ腫瘍を取り除いたのちに化学療法を行うのが基本
 卵巣がんの診断がついた場合、基本的には、手術によってできるだけ腫瘍を取り除き、その後、複数の抗がん薬や分子標的薬を組み合わせて行う化学療法を行います。患者さんの年齢や状態、病期に応じて、さまざまな薬の組み合わせがあり、それぞれ効果が認められています。がんが広範囲に広がってしまっている場合には、手術前に抗がん薬を用い、切除範囲を狭めることもあります。

(1)Braem MG, Onland-Moret NC, van den Brandt PA, et al.Reproductive and hormonal factors in association with ovarian cancer in the Netherlands cohort study. Am J Epidemiol. 2010 ;172:1181-1189.
(2)Buys SS, Partridge E, Black A, et al; PLCO Project Team.Effect of screening on ovarian cancer mortality: the Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian (PLCO) Cancer Screening Randomized Controlled Trial. JAMA. 2011;305:2295-2303.
(3)Pinsky PF, Zhu C, Skates SJ, et al.Potential effect of the risk of ovarian cancer algorithm (ROCA) on the mortality outcome of the Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian (PLCO) trial. Int J Cancer. 2013;132:2127-2133.
(4)Reade CJ, Riva JJ, Busse JW, et al.Risks and benefits of screening asymptomatic women for ovarian cancer: a systematic review and meta-analysis. GynecolOncol. 2013 ;130:674-681.
(5)国立がん研究センターがん情報サービス. 地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2011年). http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html アクセス日2015年5月1日
(6)国立がん研究センターがん情報サービス. 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2013年). http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html アクセス日2015年5月1日
(7)National Comprehensive Cancer Network ホームページ(NCCN:全米がんセンターガイドライン策定組織).http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/ovarian.pdf アクセス日 2015年5月1日
(8)日本婦人科腫瘍学会.NCCNガイドライン 日本語版 2014年版.  http://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/ アクセス日2015年5月2日
(9)Tangjitgamol S, Manusirivithaya S, Laopaiboon M, et al.Interval debulking surgery for advanced epithelial ovarian cancer.Cochrane Database Syst Rev. 2013 Apr 30;4:CD006014.
(10)Winter-Roach BA, Kitchener HC, Lawrie TA. Adjuvant (post-surgery) chemotherapy for early stage epithelial ovarian cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Mar 14;3:CD004706.
(11)Vergote I, Tropé CG, Amant F, et al; European Organization for Research and Treatment of Cancer-Gynaecological Cancer Group; NCIC Clinical Trials Group.Neoadjuvant chemotherapy or primary surgery in stage IIIC or IV ovarian cancer.N Engl J Med. 2010 ;363:943-953.
(12)Ozols RF, Bundy BN, Greer BE, et al; Gynecologic Oncology Group.Phase III trial of carboplatin and paclitaxel compared with cisplatin and paclitaxel in patients with optimally resected stage III ovarian cancer: a Gynecologic Oncology Group study. J ClinOncol. 2003 ;21:3194-3200.
(13)Jaaback K, Johnson N, Lawrie TA.Intraperitoneal chemotherapy for the initial management of primary epithelial ovarian cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Nov 9;(11):CD005340.
(14)Parmar MK, Ledermann JA, Colombo N, et al ; ICON and AGO Collaborators. Paclitaxel plus platinum-based chemotherapy versus conventional platinum-based chemotherapy in women with relapsed ovarian cancer: the ICON4/AGO-OVAR-2.2 trial.Lancet. 2003;361:2099-2106.
(15)Cantù MG, Buda A, Parma G, et al.Randomized controlled trial of single-agent paclitaxel versus cyclophosphamide, doxorubicin, and cisplatin in patients with recurrent ovarian cancer who responded to first-line platinum-based regimens. J ClinOncol. 2002 ;20:1232-1237.
(16)Mei L, Chen H, Wei DM, et al.Maintenance chemotherapy for ovarian cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 29;6:CD007414.
(17)Burger RA, Sill MW, Monk BJ,et al.Phase II trial of bevacizumab in persistent or recurrent epithelial ovarian cancer or primary peritoneal cancer: a Gynecologic Oncology Group Study.J ClinOncol. 2007;25:5165-5171.
(18)Zhou M, Yu P, Qu X, Liu Y, Zhang J. Phase III trials of standard chemotherapy with or without bevacizumab for ovarian cancer: a meta-analysis.PLoS One. 2013 ;8:e81858. Ye Q, Chen HL.Bevacizumab in the treatment of ovarian cancer: a meta-analysis from four phase III randomized controlled trials.Arch Gynecol Obstet. 2013;288:655-666.

出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報

家庭医学館 「卵巣がん」の解説

らんそうがん【卵巣がん Ovarian Cancer】

◎初期にはあまり症状がない
[どんな病気か]
[症状]
[原因]
[検査と診断]
[治療]

[どんな病気か]
 正常な卵巣は、親指の頭くらいの大きさで、子宮の左右にあります。婦人科のがんのなかで、卵巣がんは年々増加の傾向を示し、死亡率も高く、予後のよくない病気です。これは、卵巣が腹腔(ふくくう)の奥にあるため、直接に検査する方法がないことや、“しのびよる殺人者”と呼ばれるように、早期の卵巣がんは症状があまりなく、発見したときには、すでに腹腔内に広がった進行がんになっている場合が多いことによります。
 卵巣は、腫瘍(しゅよう)の温床(おんしょう)といわれるように、多種多様な腫瘍が発生します。そのため、卵巣腫瘍は発生した組織の種類により、表層上皮性間質性腫瘍(ひょうそうじょうひせいかんしつせいしゅよう)、性索間質性腫瘍(せいさくかんしつせいしゅよう)、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)、その他の腫瘍、の4つに分類され、さらに、それぞれを良性、境界悪性(良性と悪性の中間)、悪性の3群に分け、診察・治療上の便宜がはかられています。一般的にいう卵巣がんは、上皮性腫瘍の悪性群と境界悪性群を意味しています。
 卵巣がんの治療にあたっては、腫瘍の広がりぐあいをあらわした進行度の分類が重要です(図「卵巣がんの進行期分類」表「卵巣がんの進行期分類」)。
 卵巣腫瘍の発生頻度は、上皮性間質性腫瘍が60~70%ともっとも多く、ついで胚細胞腫瘍の20~25%、性索間質性腫瘍5~10%の順です。
 卵巣腫瘍は、その性状から嚢胞性(のうほうせい)腫瘍(袋状のもの)と充実性腫瘍(嚢胞をつくらないもの)に大別され、嚢胞性腫瘍の多くは良性です。一方、充実性腫瘍の約80%は悪性で、そのうち70~80%はいわゆる卵巣がんです。
 発症年齢別にみた卵巣腫瘍の頻度は、20歳以下の若い人では胚細胞腫瘍が大部分で、性成熟期の女性は転移性(てんいせい)がん(とくに胃がん(「胃がん」)や乳がん(「乳がん」)から)、そして、高齢者では約70%が卵巣がんです。

[症状]
 症状は、ある程度腫瘍が大きくならないと現われないことが多く、一般的には、下腹部腫瘤感(しゅりゅうかん)(下腹部になにかかたいものを触れる)、膨満感(ぼうまんかん)、下腹部痛、圧迫感などの腹部症状が主です。下腹部痛の多くは鈍痛で、激痛があるときには茎捻転(けいねんてん)や破裂が疑われます。
 月経困難症(「月経困難症」)や腹水貯留(ふくすいちょりゅう)なども、卵巣腫瘍発見の契機となります。
 また、性器出血などの場合は、ホルモンをつくる腫瘍のこともありますので、女性化や男性化などの特殊な症状にも注意が必要です。

[原因]
 卵巣がんがおこるはっきりした原因はありません。しかし、消化器がんや乳がんの手術をしたことがある人や、卵巣機能不全(らんそうきのうふぜん)、流産、不妊症など、月経・妊娠に関する異常の経験のある人は、卵巣がんにかかるリスクが高いので注意が必要です。
 なお、最近、BRCA‐1遺伝子が、卵巣がんの家系に関連があるとの報告もされています。

[検査と診断]
 通常の診療と同様に、問診、外診、内診が行なわれ、必要に応じて直腸診が併用されます。卵巣腫瘍の疑いがあると診断されたら、スクリーニング検査(細胞診(さいぼうしん)、超音波断層法、腫瘍マーカー、ホルモン検査など)を行ないます。悪性腫瘍の疑いが強いときには、進行期、組織型を推定するため、精密検査(CTスキャン、MRI、穿刺(せんし)細胞診、腹腔鏡、胃腸検査、その他)を行ないます。
●問診
 転移性がんの可能性を考え、消化器がんや乳がんの手術をしたことがないかどうか、また、卵巣機能不全や不妊症は上皮性卵巣がんになるリスクの高い病気なので、そうした病気をもっていないかどうか聞かれます。
●外診
 卵巣がんの場合、胸水(きょうすい)や腹水がたまることが多く、外から見て腹部などが膨れていることがあります。
●内診
 細胞診を行なうとともに、腫瘤の位置、大きさ、形、性状、可動性、圧痛の有無などを調べます。弾性硬(弾力があってかたい)、髄様軟(やわらかい)、凹凸不整(でこぼこしている)、可動性不良(さわってもあまり動かない)のものは悪性の可能性が高くなります。
●画像診断
 卵巣腫瘍の画像診断は、近年飛躍的に発展し、超音波断層法、CTスキャン、MRIなどにより、存在診断(腫瘍の有無をみる)、質的診断(腫瘍の種類をみる)、腫瘍の広がりの診断ができるようになりました。
●腫瘍マーカー
 腫瘍は、その種類により、それぞれの特有の腫瘍マーカー(「腫瘍マーカー」)をつくります。ですから、腫瘍マーカーは、手術前の診断の補助になるとともに、治療効果の判定や再発の発見に利用されます。
 最近の診断・治療に応用されているおもなものは、CA125(「CA125」)、CA724、CEA、CA199、AFP、LDH、HCGなどで、悪性腫瘍の場合、高い値を示すことが多く、卵巣がんの診断に役立ちます。

[治療]
 卵巣がんの治療は、手術療法、化学療法、放射線療法がおもなものですが、中心となるのは手術療法と化学療法です。
●手術療法
 卵巣がん(上皮性)と診断されたら、比較的早期に基本手術(子宮全摘(ぜんてき)、両側の卵巣卵管摘出(てきしゅつ)、大網切除(たいもうせつじょ)、リンパ節郭清術(せつかくせいじゅつ)など)を行ない、できるだけ残っている腫瘍を少なくするほうがよいでしょう。さらに、他の臓器をいっしょに切除することもよくあります。
 一方、若い人に多く発生する胚細胞腫瘍の場合は、妊娠する可能性を残した卵巣の保存手術も可能です。
●化学療法
 化学療法には、手術の後に行なう補助化学療法と、手術できる可能性の少ない進行がんに行なう術前化学療法に区別されます。手術後の補助化学療法は、ふつう3~4週間隔で3~6コースの投与が行なわれます。
 使用される薬剤は、白金製剤のシスプラチンを中心とした三者併用のCAP(シクロホスファミド、アドリアマイシン、シスプラチン)が一般的です。最近では、タキソールも有効です。
 化学療法の副作用には、白血球(はっけっきゅう)・赤血球(せっけっきゅう)・血小板(けっしょうばん)の減少、消化器症状(吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと))、脱毛などがありますが、脱毛以外は薬剤の使用により改善が可能です。また、脱毛は再び生えてくるので心配はありません。副作用の心配より、むしろ、積極的な化学療法を行なうほうが予後の改善につながります。
 なお、放射線療法は、卵巣がんの場合は特別な腫瘍と部分的な再発にかぎって行なわれます。
●日常生活の注意と予防
 卵巣がんの手術後、退院が許可されてからはとくに心配することはありませんが、白血球の減少がある人は、免疫力(めんえきりょく)が低下しているので注意が必要です。また、手術による腹腔内の癒着(ゆちゃく)が考えられるときには、消化不良の原因となるものはできるだけ食べないようにしましょう。
 予防としては、定期検診をしっかり受け、卵巣腫瘍の早期発見に努めることがたいせつです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「卵巣がん」の解説

卵巣がん

 かなり進行するまで自覚症状がなく、早期発見の難しいがんのひとつです。以前は罹患者数が少なかったのですが、検査機器の進歩で最近は多くみつかるようになりました。近い将来、死亡数で子宮がんを逆転する可能性もあると推測されています。

●おもな症状

 早期ではほとんど無症状。進行した場合、腹部膨満ぼうまん感、下腹部の痛み、排尿障害、便秘など。腹膜に転移すると腹水がたまります。その他、貧血、体重減少などがあります。

①超音波/腫瘍マーカー

  ▼

②CT/MR/PET-CT

画像診断と腫瘍マーカーが中心

 婦人科の内診や直腸診によって、卵巣のはれやしこりに触れる場合もあり、これから発見されることもあります。たいていは画像診断と腫瘍マーカーが中心になります。卵巣は体の奥のほうにあるため、検査器具を挿入することができず、判定を難しくしています。それでも、腹部超音波(→参照)や腹部CT(→参照)、MR(→参照)、PET-CT(→参照)などを組み合わせて絞り込んでいくことで、がんの有無、大きさ、腹水の有無などがわかります。良性・悪性の区別もおおむね見当がつきます。とくに経腟超音波は、小さな腫瘍の鑑別に有効です。

 腫瘍マーカー(→参照)としては、CA125 が高い陽性率(全卵巣がんで80%)を示し、そのほかCEAなども腫瘍の種類によっては使われています。腹水がたまっている場合では、穿刺せんし吸引細胞診(細い針を刺して細胞を採取し、病理検査する)を行い、診断に役立てます。

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android