改訂新版 世界大百科事典 「原子力平和利用国際会議」の意味・わかりやすい解説
原子力平和利用国際会議 (げんしりょくへいわりようこくさいかいぎ)
International Conference on the Peaceful Uses of Atomic Energy
略称ICPUAE。原子力平和利用国際会議は,国際連合主催でその第1回会合は1955年に開催された。開催地がこれまでジュネーブであったため,通称ジュネーブ会議と呼ばれている。この原子力平和利用国際会議は,原子力開発の歴史とともに,漸次その性格を変え,時の原子力開発の社会背景と深いかかわりを持った。1953年のアイゼンハワー・アメリカ大統領のいわゆる〈原子力平和利用宣言〉の2年後に開かれた第1回会議は,原子力平和利用を初めて国際社会に紹介したものであり,特にそれまで秘密のベールで閉ざされていた東西両陣営の原子力関係の技術情報が大量に公開されたことから,世界的にその会議の意義が高く評価され,熱狂的な反応があった。58年の第2回会議,64年の第3回会議では,原子力開発の基礎段階から実用化段階を迎え,すでに軽水炉の商業炉が運転を開始した時代であり,原子力技術の将来性,より安価な発電技術の追求などの技術的な側面からの討議が行われた。71年の第4回会議では,原子力技術の進歩を反映し,原子力発電が産業として自立,確立する時期にさしかかった時代背景から,これまでの会議の技術的側面からより原子力産業に関連する問題,特に技術と経済性,および法的制約の結びつきといった企業的側面の関心が強調された。第5回会議はユーゴスラビアの提案により,83年に開催すべく準備が進められた。しかし開発途上国と原子力先進諸国との間に,原子力平和利用国際協力の進め方に関する基本的考え方に相違があり,このため,会議の議題案,諸手続きなどについて調整がつかず,87年に開催された。
執筆者:林 幸秀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報