原子構造(読み)げんしこうぞう

百科事典マイペディア 「原子構造」の意味・わかりやすい解説

原子構造【げんしこうぞう】

原子番号Zの元素の原子は,正電荷Ze(eは電子の電荷の絶対値)を帯び原子質量の大部分を占める直径10(-/)13cm程度の原子核のまわりに,Z個の電子が規則的に分布し全体として直径10(-/)8cm程度の大きさを示す。原子内の電子状態は,主量子数n,方位量子数l,磁気量子数m,スピン量子数Sの四つの量子数により指定される。nは電子のエネルギー準位をほぼ決定するもので,n=1,2,3,……のときをK殻,L殻,M殻,……と呼ぶこともある。lはエネルギー準位をさらに細分するもので,主量子数nの場合0,1,2,……,n−1のn個の整数のどれかをとり,l=0,1,2,3,4,……のときs,p,d,f,……と呼ぶ。電子のエネルギー準位はnとlで決まり,どちらも大きいほど準位が高く,1s,2s,2p,3d等と示される。方位量子数lのときmは−l,−l+1,……,−1,0,+1,……,l−1,lの2l+1個の整数のうちどれかをとる。さらにSは1/2と−1/2の2種しかとり得ない(スピン)。原子番号Zの原子がもつZ個の電子は,以上4種の量子数で区別される状態をエネルギー準位の低いものから順に一つずつ占める(パウリの原理)。K,L,M等の殻がすべて電子でみたされると(閉殻),原子は化学的にきわめて不活発になり,これが周期表の0族の希ガス元素である。閉殻の外にある電子は原子の化学的・光学的性質を決定し,これが同数である原子はそれらの性質がよく似ている。元素の周期表は原子内電子配置の以上のような性格を反映している。→原子模型
→関連項目価電子原子電子電子殻フランクヘルツ量子数

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子構造」の意味・わかりやすい解説

原子構造
げんしこうぞう
atomic structure

原子番号 Z の原子は,その中心に正電荷 Ze (e電気素量) をもつ原子核があり,そのまわりに Z 個の電子があるという構造になっている。ただし,各電子は中心にある原子核のクーロン引力と他の電子から受けるクーロン斥力を平均化したポテンシャル中を運動する (一体近似) 。量子力学によると,このときの各電子の軌道は,エネルギーを指定する主量子数 n と,角運動量を指定する方位量子数 l とで表される。n は 1,2,3,… であるが,l は 0,1,2,3,…,n-1 の n 個の値しかとれない。l が 0,1,2,3,… の軌道はそれぞれ s,p,d,f,… 軌道と呼ばれる。一つの軌道に入ることのできる電子数は n には関係なく,l だけで決まり,2(2l+1) 個であり,s軌道には 2個,p軌道には 6個の電子が入りうる。また,n=1,l=0 の軌道は 1s,n=2,l=1 の軌道は 2p のように書き,その軌道に入る電子数を冪 (べき) で表す。たとえば,Z=12 のマグネシウムでは,電子配置は (1s)2(2s)2(2p)6(3s)2 である。一般に,n が小さいほど,また n が同じときは l が小さいほどエネルギーは低く,基底状態では,パウリの原理によって,電子はエネルギーの低い状態から順番に詰まっていく。元素の周期表は,このような電子配置の規則性によって説明される。

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世界大百科事典(旧版)内の原子構造の言及

【原子】より

…このため,原子内で電子が円軌道や楕円軌道を描いて運動しているという描写も,一つの有用な原子模型といえる。
【原子の存在の確定と原子構造の探究】
 物質を細分していくと,いくらでも細分できるのか,それとも,それ以上分割できない最小単位,すなわち原子に到達するのかということについては,古代ギリシアのころから論ぜられていた。デモクリトスは物質は原子からなるという原子説を唱え,アリストテレスは連続説を唱えた。…

【周期律】より

…さらに20世紀に入ってから,原子の構造が明らかになるとともに,その理論的解釈も可能になり,周期律はあらゆる化学的研究に不可欠の,現代化学の最も重要な根本原理と考えられるようになった。
[周期律の理論]
 現在の化学者は,元素の周期律が成り立つ真の理由は,元素の原子構造,とくにそれらの最外部の電子の数と性質が,原子番号(原子量の順序としてではなく,核の電荷数として定義した,今日の意味での原子番号。ただし,実際上はこの二つの定義による原子番号は二,三の例外を除いて一致する)の増加とともに周期的に変化するためであるとみている。…

※「原子構造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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