反革命の罪(読み)はんかくめいのつみ

改訂新版 世界大百科事典 「反革命の罪」の意味・わかりやすい解説

反革命の罪 (はんかくめいのつみ)

反革命の罪とは,十月革命後のソビエト政権が,1927年の〈国家犯罪に関する規定〉において,労農ソビエト権力および政府を転覆崩壊または弱体化させ,またはその対外的安全および革命の経済的・政治的ならびに民族的成果を崩壊または弱体化させるすべての行為をいうとして定義したもので,具体的には,祖国に対する反逆,武装反乱,外国との通謀スパイ,破壊活動,テロ行為,反革命的扇動,反革命団体への加入,反革命的サボタージュなどの犯罪類型を含んでいた。〈反革命〉の定義は,その後,スターリン時代に拡大解釈されて,直接反革命の目的がなくても,これを認容しまたは予見すべきであった場合をも含むとし,さらに,軍人の祖国反逆については,家族の連座処罰規定まで導入されるに至った。しかし,スターリン批判後,58年の〈国家犯罪の刑事責任に関する法律〉は,この拡大をもとに復させるとともに,旧規定の内容に改正を加えた。改正点として重要なのは,まず形式的には,反革命の罪という名称が姿を消し,かわって,〈とくに危険な国家犯罪〉という名称が用いられたことである。それは,ソビエト体制がすでに反革命の切迫した危険から脱し,対内的・対外的な安全と安定性を確保したことのあらわれであるといえよう。次に内容的には,一方若干の古い規定を削除し,規定方法をより明確化するとともに,他方では,外国代表に対するテロ行為や戦争宣伝の禁止規定を新設した点が注目される。そして,この改正規定は,そのままの形で,ロシア共和国をはじめとする各共和国刑法典の各則第1章に組み込まれていた(たとえばロシア共和国刑法典64~73条)。その中で現実的な意味をもったのは,反ソ的な扇動および宣伝の罪であろう(ペレストロイカ期の1989年7月削除)。相対的な安定化と明確化という方向にもかかわらず,ソビエト体制の基礎を脅やかす,危険な国家犯罪に対するきびしい処罰(死刑を含む)という,一貫した政策は不変であったといえよう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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