叡空(読み)えいくう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「叡空」の意味・わかりやすい解説

叡空
えいくう

没年不詳。平安末期の天台宗の僧。藤原伊通(ふじわらのこれみち)の子ともいう。慈眼房(じげんぼう)と号す。大原良忍(りょうにん)に就いて、円頓戒(えんどんかい)、融通念仏(ゆずうねんぶつ)などを受け、比叡山(ひえいざん)西塔黒谷(くろだに)に閑居し、円頓戒黒谷流の戒師として名をはせた。1150年(久安6)法然(ほうねん)(源空(げんくう))が入門すると、『往生要集』を講じて浄土教を授け、また円頓戒の奥義(おうぎ)をも授けた。教義において法然と意見の相違があったと伝えられるが、晩年本尊聖教、坊舎などのすべてを法然に譲り、自ら弟子としての礼をとっている。没年は治承(じしょう)3年(1179)2月とも4月ともいうが、明らかではない。著書に『円頓戒法秘蔵大綱集(えんどんかいほうひぞうたいこうしゅう)』1巻。

[中尾良信 2017年5月19日]

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朝日日本歴史人物事典 「叡空」の解説

叡空

没年:治承3.4.2(1179.5.10)
生年:生年不詳
平安後期の天台宗の学僧で,法然の師。一説に治承3(1179)年2月2日死亡。慈眼房という。融通念仏の祖の良忍 に浄土教を学び,比叡山黒谷別所に住し,『往生要集』などを講じ,すぐれた学解で知られた。また良忍から円頓戒を受けて,授戒の師でもあった。法然に天台と浄土の教義を教えるとともに,円頓戒を授けた。晩年におよび本尊,聖教,房舎を法然に譲った。『法然上人伝絵』によれば,18歳の法然が出離の心を述べたときに,「法然道理のひじりなり」と叡空を感嘆させたことから,法然房と名乗るようになった。<著作>『円頓戒法秘蔵大綱集』<参考文献>『法然上人伝絵』3,13巻

(林淳)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「叡空」の意味・わかりやすい解説

叡空
えいくう

[生]?
[没]治承3(1179).2/4
平安時代末期の天台宗の僧。藤原伊通の子といわれる。比叡山に入り,密教を修め,良忍に師事して円頓戒 (えんどんかい) を受けた。のち西塔の黒谷に住し,念仏者として名を高めた。法然は在叡時代,叡空に師事したが,のち逆に法然の弟子となり,法然の浄土教成立に大きな影響を与えたといわれる。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「叡空」の解説

叡空 えいくう

?-1179 平安時代後期の僧。
法然の師。良忍について円頓(えんどん)戒をうけ,天台系浄土教をまなぶ。比叡山(ひえいざん)西塔の黒谷にすみ,「往生要集」を講義した。円頓戒黒谷流の祖。藤原伊通(これみち)の子といわれる。治承(じしょう)3年4月2日死去。号は慈眼房。著作に「円頓戒法秘蔵大綱集」。

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