口真似(読み)くちまね

精選版 日本国語大辞典 「口真似」の意味・読み・例文・類語

くち‐まね【口真似】

[1] 〘名〙 他人のことばや口調、声などをまねて言うこと。口まねび。
※百座法談(1110)六月二六日「孫居これをあざけりわらひてくちまねをせむために」
慶長見聞集(1614)五「今我々が口すみさを何が面白さにきゃつめは口まねしけるぞや」
[2] 狂言。各流。酒の客の応対に、主の言う通りにすることを命じられた太郎冠者が、必要以上に主のまねをする。

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デジタル大辞泉 「口真似」の意味・読み・例文・類語

くち‐まね【口真似】

[名](スル)他人のものの言い方や声音こわねをまねること。
[補説]狂言の曲名別項。→口真似
[類語]まね模倣模擬模写まね事人まね猿まね物まね手まね見よう見まね右へ倣え模する複写複製写し模造紛い物偽物真似事倣う見倣うなぞらえる擬するイミテーションカーボンコピー

くちまね【口真似】[狂言]

狂言。酒の客をあしらうため、自分のまねをするように主人に言われた太郎冠者が、必要以上に主人のまねをする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「口真似」の意味・わかりやすい解説

口真似
くちまね

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。太郎冠者(シテ)が酒乱で有名な男を主人の酒の相手に招いてしまう。主人は適当にあしらって帰そうと考え、冠者には自分の真似(まね)をしてうまく応対せよといい含める。ところが冠者は、主人が「お杯(さかずき)を出せ」といえば、客に向かって「お杯を出せ」というぐあいに文字どおりの真似を繰り返す。腹をたてた主人は冠者を引き回して倒し、客に挨拶(あいさつ)して奥に入ってしまう。すると、太郎冠者も同じように客を引き倒して、相手に挨拶をする。シテは主人の真似をしていればよいので初歩的な曲とされ、類曲に『察化(さっか)』や『口真似聟(むこ)』がある。1593年(文禄2)の禁中能で豊臣(とよとみ)秀吉徳川家康前田利家(としいえ)の3人が演じた『耳引』という狂言はこの曲かといわれている。

[池田英悟]

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