召放(読み)めしはなつ

精選版 日本国語大辞典 「召放」の意味・読み・例文・類語

めし‐はな・つ【召放】

〘他タ四〙
大勢の中から、その人だけをお呼び寄せになる。
源氏(1001‐14頃)玉鬘「かく聞きそめて後はめしはなちつつ」
② 放逐する。解任する。
大乗院寺社雑事記‐文明元年(1469)一〇月二五日「去康正二年〈子〉、長祿元年〈丑〉、此両年分年貢、一向無沙汰之間、召放之了」

めし‐はな・す【召放】

〘他サ四〙
中世幕府領主がその配下の者の領地財産などを取り上げる。はぎとる。没収する。
吾妻鏡‐元久三年(1206)正月二七日「故将軍御拝領之地者、不大罪者、不召放之由被定」
近世旗本御家人名主などの役を取り上げる。

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改訂新版 世界大百科事典 「召放」の意味・わかりやすい解説

召放 (めしはなち)

鎌倉時代以降,おもに武士に対して行われた刑罰の一種。鎌倉幕府法では,召放はもっぱら所領(所帯)の没収を意味し,所領を召す,あるいは収公,改易とも称せられた。鎌倉時代には武士の所職と所領は不可分の関係にあり,所領の没収は武士に対する刑の根幹として広く行われた。御成敗式目ならびに追加法には,所領の没収を科した罪は多い。例えば御成敗式目では,殴人の科について,〈侍においては所帯を没収せらるべし,所領なくば流罪に処すべし,郎従以下に至ってはその身を召禁ぜしむべし〉と定め,また謀書(文書偽造)の罪科について,〈侍においては所領を没収せらるべし,所帯なくば遠流(おんる)に処すべきなり,凡下(ぼんげ)の輩は火印をその面に捺せらるべきなり〉と定めている。所領の没収は全部とするもの,半分,3分の1,5分の1などの差があった。《吾妻鏡》によれば,1206年(建永1)故将軍(源頼朝)のときの拝領地は大罪を犯さざれば召し放すべからず,と定められた。戦国時代の分国法にも所領召放を定めたものがある。江戸時代における大名改易はこの所領召放につながるものである。

 江戸時代には所職と所領の一体性が少なくなり,御切米召放,御扶持召放などもあるが,召放の語は主として役儀の召放すなわち役職の解任の意に用いられた。例えば,1719年(享保4)引負(ひきおい)(年貢を上納しない)のあった代官が御役を召放のうえ,その後も上納が滞れば御扶持召放と申し渡され,また1805年(文化2)御書院番頭が御役御免小普請入を申し渡されている。役儀取放,役儀取上,御役御免も同義に用いられた。1784年(天明4)目付2名は心がけ悪しとして御役御免寄合入を命じられている。寄合(3000石以上),小普請(3000石以下)ともに無職である。《公事方御定書》には,禁制の田畑永代売の証文に加判した名主,病気の旅人に加療もせず宿次に送り出した問屋などが役儀取上と定められており,制限以上の売女を抱えおいた村の名主が役儀取放となった仕置例などもある。
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