台子(読み)だいす

精選版 日本国語大辞典 「台子」の意味・読み・例文・類語

だい‐す【台子】

〘名〙
正式茶の湯に用いられる四本柱の棚。風炉(ふろ)茶碗・茶入れ・建水などの諸道具を載せておくもの。及台子(きゅうだいす)竹台子真台子(しんのだいす)などの種類がある。〔宗達茶湯日記(自会記)‐天文一七年(1548)一二月六日〕
② ①に載せた茶釜
※雑俳・たから船(1703)「たぎる茶や・だいすの内に降るしぐれ

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デジタル大辞泉 「台子」の意味・読み・例文・類語

だい‐す【台子】

茶道具棚物の一。風炉ふろかま水指みずさしなどの一式を飾るもの。入宋した南浦紹明なんぽじょうみょう帰朝のとき仏具としてもたらしたと伝えられる。及台子きゅうだいす真台子しんのだいす・竹台子・桑台子・高麗台子こうらいだいすなどがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「台子」の意味・わかりやすい解説

台子 (だいす)

点茶に用いる諸道具をのせる棚の一種。1437年(永享9)10月26日に,後花園院が足利義教室町殿へ行幸したときの記録《室町殿行幸御飾記》の中に,〈御茶湯棚〉〈御茶湯所之御違棚〉とあって,その棚に喫茶用具が飾り付けられている。このころすでに,喫茶が饗応の焦点であったことがわかるが,その棚は〈上棚〉〈中棚〉〈下棚〉の3段からなり,一つの〈間〉(座敷)の中で固定された空間であった。この記録に〈台子小堆朱〉の文字が1ヵ所みえるが,これはここでいう〈台子〉とは異なる。台子が〈間〉の中に持ち出されるということは,そこに点茶の手続(手前)が,客の目前で演じられることを意味する。《南方録(なんぼうろく)》には,この後花園院と義教との交渉の中で,〈台子点前〉が成立している記述がある。《室町殿行幸御飾記》に比して,《南方録》では後代からの理想化が加わることは否めないが,古格を伝えるものといえる。

 台子は,その下段(地板)に風呂釜,水指,杓立(柄杓,火箸が入る),建水(蓋置が入る)を飾り,天板の上に,盆,茶入,天目茶碗などが飾られる。いわば点前用具一式を配置するための棚である。台子点前が義教の時点までさかのぼれないとしても,台子に飾られる道具はすべて中国舶載の美術品(唐物)であった。台子自体も,南浦(なんぽ)紹明によって中国禅院で使用されたものが持ち帰られ,大徳寺に伝来するとされていた。《南方録》に,〈大台子,東山殿ニハ唐台三ツマデ御所持アリシカドモ,ハヾ・長サカネニ合タルハ一ツト紹鷗ノ覚書ニアリ,所々台子ヲ用ラルルニハ,日本ニテ能阿弥好ニテ,カネヨクコシラヘラレント〉とあって,〈唐物台子〉(唐台)から〈和物台子〉の成立したことを示している。唐物台子(真台子)が黒漆(真塗四本柱,蒔絵)であるのに対し,桐の白木,四本竹柱による〈竹台子〉,さらに炉専用の二本柱にした〈及台子〉としだいに和様化が進むのである。台子の種類としてはこのほか〈高麗台子〉〈爪紅(つまぐれ)台子〉があり,以上を五台子と称し,そのほか老松台子,銀杏(いちよう)台子,夕顔台子などがある。この和様化の過程で,台子の地板の幅1尺4寸の曲尺(かねじやく)に合わせたの定型化や,台子の占める寸法(1尺5寸)を切り取った〈台目畳〉の成立に伴う小間茶室の構造および点前作法にわたって,台子に依拠しながらの,わび茶への移行が進捗していく。しかし,台子が器物と点前の両面で,喫茶礼法の根本にあることは,今日でも変りない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「台子」の意味・わかりやすい解説

台子
だいす

書院や広間の点茶用に使用される棚物(たなもの)の一種。元来中国の禅院で使用されていたものを、大応国師南浦紹明(なんぽじょうみょう)が径山興聖万寿寺(きんざんこうしょうまんじゅじ)の住僧虚堂智愚(きどうちぐ)に法を学び、1267年(文永4)の帰朝に際し持ち帰ったとされる(『茶湯古事談(ちゃのゆこじだん)』)。さらにその台子は、南浦が開山となった博多(はかた)の崇福寺(そうふくじ)に将来され、京都の大徳寺に伝わって天竜寺の夢窓疎石(むそうそせき)が点茶に使用したと伝えるが、すべて後世の伝承であって、真偽を明らかにすることはできない。台子飾りによる点茶を初めて行ったのは、1437年(永享9)後花園(ごはなぞの)院が足利義教(あしかがよしのり)の邸(やしき)へ行幸したときの記録『室町殿行幸御餝記(おかざりき)』(徳川美術館蔵)である。義教は、寵臣(ちょうしん)赤松貞村(さだむら)に水干(すいかん)、烏帽子(えぼし)を着けさせて、病気見舞いとして下賜されていた青磁雲竜水指(みずさし)、花山天目(かざんてんもく)、鎌倉茄子(なす)の3種を使った三種極真点前(てまえ)を披露したという(『南方録(なんぽうろく)』)。ここに書院飾りにおける台子の茶法の基礎が成立し、以後、『南方録』「台子」巻にみられるような曲尺割(かねわり)の法にのっとった五十数種にも及ぶ台子の点前が整ったのである。現在みられるような真・行・草の九段台子(裏千家では十二段)に整理されたのは江戸中期のことである。台子の種類としては真台子(しんのだいす)、及(きゅう)台子、竹台子、高麗(こうらい)台子、爪紅(つまぐれ)台子を五つ台子と称し、ほかに老松(おいまつ)台子、銀杏(いちょう)台子、夕顔台子などがある。台子飾りは地板に風炉釜(ふろがま)、水指、建水(けんすい)、杓立(しゃくだて)、蓋置(ふたおき)、火箸(ひばし)、柄杓(ひしゃく)などの皆具(かいぐ)を置く七飾りを真として、それぞれに応じて略していくようになっている。

[筒井紘一]

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百科事典マイペディア 「台子」の意味・わかりやすい解説

台子【だいす】

点茶に用いる諸道具をのせる棚。風炉(ふろ),茶碗茶入,水指(みずさし)などをのせておく。及(きゅう)台子,桑台子,真(しん)台子などがある。
→関連項目石州流茶室

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世界大百科事典(旧版)内の台子の言及

【茶室】より

… これに対して新たに台頭した草庵の茶は,客座と点茶の座を一室に結合して,客と亭主が一座を建立する座敷の茶であった。草庵の茶における茶法の基本は〈台子(だいす)〉であった。《君台観左右帳記》に見られる茶の湯棚には明らかに台子飾に相当する部分が包含されており,その部分だけを独立させれば台子が成立する。…

※「台子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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