右筆書(読み)ゆうひつがき

改訂新版 世界大百科事典 「右筆書」の意味・わかりやすい解説

右筆書 (ゆうひつがき)

古文書学上の用語。一般に,貴人の出す文書で主人に代わって侍臣が書いたものを,右筆書という。右筆は,祐筆,佑筆とも書き,筆を助けるの意で,貴人発給文書の文案作成,浄書を職掌とする。右筆書には広狭2とおりの解釈があり,広い意味では,右筆奉行がみずからの名を署して発給する,いわゆる奉書を含める場合がある。公家文書の院宣,綸旨(りんじ),御教書(みぎようしよ)等,武家文書の室町幕府奉行人奉書などがこれである。狭い意味では,主人の名において発給する文書を,右筆がみずからの名を署すことなく執筆したものを指し,いわゆる自筆書と対立する概念である。公家文書の勅書書状,武家文書の御内書(ごないしよ),御判御教書等がこれにあたる。この場合,通常署名や署判は主人がみずから署するのが原則であるが,最近の研究では,一時に多数の文書を発給するような場合,例えば足利尊氏の軍勢催促状,祈禱命令書においては,右筆が花押まで書く例があるといわれている。右筆書は,あくまで主人の命によって書かれたもので,その効力は自筆のものに劣らず,いわゆる偽文書(ぎもんじよ)とは異なる。なお,武家文書の関東御教書,引付頭人奉書,室町幕府御教書などは,鎌倉殿室町殿の仰を執権・連署,引付頭人,執事・管領等が奉じた奉書であるが,これら奉者は署判を加えるのみで,本文は右筆方奉行により書かれている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android