合成ガス(読み)ゴウセイガス(英語表記)synthesis gas

デジタル大辞泉 「合成ガス」の意味・読み・例文・類語

ごうせい‐ガス〔ガフセイ‐〕【合成ガス】

水素一酸化炭素とからなる工業用ガス。石油炭化水素コークスから作られ、メタノール合成や各種化学製品原料に用いる。

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改訂新版 世界大百科事典 「合成ガス」の意味・わかりやすい解説

合成ガス (ごうせいガス)
synthesis gas

一酸化炭素と水素との混合ガスをいい,メタノール合成オキソ合成フィッシャー合成など,化学工業用原料として用いられる。また一酸化炭素を水蒸気と反応させて水素に変えれば,アンモニア合成,水素化脱硫その他の目的に使用できる。合成ガスは天然ガス,石油,石炭などを原料として,次のような原理と方法によって製造される。

 一般に,炭化水素から酸素(アンモニア合成の場合は空気)および水蒸気を用いて高温で合成ガスが生産される化学反応は次のとおりである。

また一酸化炭素の水素への変換反応(シフト反応ともいう)は次のとおりである。

 CO+H2O⇄CO2+H2

 合成ガスの製造反応は触媒を用いるときには700~850℃で,触媒を用いないときには1000~1500℃で行われる。天然ガス,液化石油ガスLPG),石油ナフサなどを原料とする場合はアルミナマグネシアを担体とし,カリウムを添加したニッケル系触媒が用いられる。重油原油を原料とする場合は触媒を用いることができない。これらの原料には硫黄化合物や重金属が含まれるため,触媒が急速に活性を失うためである。そこで高温で熱反応により合成ガスを得る。その技術としてテキサコ法シェル法が知られている。石炭を原料とする場合も熱反応を用いる。実用技術としては,塊炭を固定床式反応器でガス化するルルギ法,径10mm以下に粉砕した石炭を流動床式反応器でガス化するウィンクラー法,微粉炭を噴流層反応化でガス化するコッパース・トチェク法などがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「合成ガス」の意味・わかりやすい解説

合成ガス
ごうせいがす
synthesis gas

一酸化炭素と水素の混合ガスのことであるが、それを燃料として用いるのではなく、化学合成用の原料として用いる場合にとくに合成ガスという。アンモニア、メタノール(メチルアルコール)、オキソ法によるオクタノール、ブタノール、フィッシャー‐トロプシュ法による炭化水素燃料、あるいは代替天然ガスとしてのメタンの合成などに用いられる。製法は、天然ガス、液化石油ガス(LPG)、ナフサのような軽質炭化水素を、ニッケル系触媒を用いて水蒸気と反応させる水蒸気改質法がもっとも多く用いられている。そのほか、重質油と酸素を用いて1500℃以上の高温で部分酸化する方法もある。合成ガスは水蒸気と酸素による石炭のガス化によっても得られる。原料価格が製品価格に大きく影響するので、輸入原料を用いる日本の競争力は著しく低下し、1932年(昭和7)に始まった日本におけるメタノールの生産は1995年(平成7)に停止され、国内消費分は全量輸入でまかなわれている。一方、アンモニアは2008年(平成20)時点でも年間120万トン生産されている。

[富田 彰]

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化学辞典 第2版 「合成ガス」の解説

合成ガス
ゴウセイガス
synthesis gas

一般に,水素と一酸化炭素よりなる混合ガスをいい,とくにメチルアルコールの合成に必要な両者のモル比が2:1の混合ガスをさすことが多い.メタノールの合成に使用されるほか,オキソ合成フィッシャー-トロプシュ合成の原料に用いられる.また,水性ガスシフト反応による水素の原料となり,アンモニア合成などに用いられる.従来は,コークス水性ガス反応などによって製造されたが,現在では,おもに天然ガスや石油系原料のスチームリホーミング法によって製造される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の合成ガスの言及

【ガス化学】より

…コークス炉ガスの主成分は,メタンCH4,一酸化炭素CO,水素H2などである。また天然ガスの主成分はメタンであるが,これを水蒸気と反応させ,一酸化炭素と水素からなる合成ガスを得ることができる。このようなわけで,天然ガスまたはコークス炉ガスのいずれを原料に用いても,生産される化学製品とその化学反応はよく似たものであり,おおむね図に示すとおりである。…

【C₁化学】より

…その一つがいわゆるC1化学である。C1化学の定義は確定していないが,一般に天然ガス,製鉄所ガス,あるいは合成ガス(一酸化炭素と水素を主成分とするガスで,天然ガス,石油系重質残油,石炭,バイオマス,都市ごみその他をガス化して得ることができる)などの炭素数1個の単純な化合物を原料として有機化合物を合成する化学技術の体系をいう。炭素数1個の単純な分子から,炭素数の多い複雑な有機化合物が合成される過程には,活性および選択性の優れた触媒が不可欠である。…

【水蒸気改質】より

…スチームリフォーミングともいう。炭化水素と水蒸気の反応によって一酸化炭素COと水素H2からなる混合ガス(合成ガス)を製造する方法。一般的な化学反応方程式は次のとおりである。…

※「合成ガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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