合成皮革(読み)ごうせいひかく

精選版 日本国語大辞典 「合成皮革」の意味・読み・例文・類語

ごうせい‐ひかく ガフセイ‥【合成皮革】

〘名〙 基材に織布または不織布を用い、これにポリ塩化ビニルポリアミドポリウレタンなどの合成樹脂を組み合わせて天然皮革に似せたものの総称。人造皮革。ビニール‐レザー

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デジタル大辞泉 「合成皮革」の意味・読み・例文・類語

ごうせい‐ひかく〔ガフセイ‐〕【合成皮革】

合成樹脂を使った皮革代替品。擬革。人造皮革フェイクレザー

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改訂新版 世界大百科事典 「合成皮革」の意味・わかりやすい解説

合成皮革 (ごうせいひかく)

皮革代替品の歴史は比較的古く,第2次大戦前は織編布にニトロセルロースなどを塗布したものを擬革,またはイミテーションレザーあるいは単にレザーと呼んでいたが,のちにポリ塩化ビニル樹脂が開発され,1948年これを使用した代替品が市販された。これは塩ビレザー(またはビニルレザー)と呼ばれ,当時の物資不足もあって大量に出回り,擬革の生産はほとんど中止された。その後品質がしだいに改良され,60年,スポンジ状のポリ塩化ビニル樹脂の表面にナイロン樹脂(ポリアミド)塗料を塗布したものが,従来の塩ビレザーと風合い,外観などが異なり,より革の性質に近づいたとして,合成皮革synthetic leatherの名を冠して売り出された。同時代より表面層にナイロン樹脂が使われるようになり,さらに2年ほどおくれて表面層にポリウレタン樹脂が使われ,現在のナイロン系およびウレタン系合成皮革の基礎が確立された。このように,合成皮革は織編布を基布とし,合成樹脂を表面層とする二層構造をもったものをいうが,前記ポリ塩化ビニル樹脂を表面層としたものは,最近では塩ビレザーまたはセミ合成皮革と呼び,合成皮革と区別するのが一般的である。また,合成皮革の後に人工皮革スエード調衣料用素材などが開発されている。これらをも含めて合成皮革と呼ぶことがあるが,これは適当ではない。

靴甲用人工皮革または人工皮革と呼ばれるものは,初めアメリカのデュポン社が本格的な靴の甲材料として開発し,コルファムという商品名で発表(日本では1964年より発売),のち各国でもこの開発が進み,現在クラリーノクラレ)をはじめとして各種の商品が売り出されている(コルファムは1971年アメリカでの製造中止)。これらのものを合成皮革と区別して靴甲用人工皮革とし,JISにその試験方法および品質規定が規格化されている。人工皮革の基本構造は,各種の短繊維にランダムな三次元交絡構造をもたせ,ポリウレタン樹脂をバインダーとした不織布を基布とし,ポリウレタン樹脂を表面層とする二層構造で,全体に連続微細な多孔構造をもつ。なかには両層の間に織編布の入った三層構造,基布または表面層のみの一層構造のものもある。

スエード調衣料用素材は,1970年ころ新しく開発された高分子相互配列体繊維法によって,今までの繊維の数十分の1ないし数百分の1という極細繊維が集合した集束繊維をつくり,この繊維とウレタン樹脂とで不織布とし,その表面を起毛して製造する。構造的には一層構造の人工皮革に相当する。このタイプに属する商品としては,クラリーノ・エフ(クラレ),アマーラ(クラレ),エクセーヌ(東レ)が市販されている。さらに近年,各種紡糸法の進歩により,極細繊維の製造が可能となり,この繊維を使った織布や編布が多種市販されている。これらのスエード調素材についての総称名は今のところ見当たらない。

日本の生産量は合成皮革が最も多く,そのうち約40%は輸出されている。国内での消費は衣料用が最も多く,次いで雑貨,かばん,靴,サンダル,袋物用の順に少なくなる。塩ビレザーと合成皮革とでは風合い,透湿性などの性質の違いがあるだけでなく,前者はドライクリーニングにより可塑剤が溶出して収縮・硬化するのに対し,後者ではこのようなことが起こらず,クリーニングが可能である。

 人工皮革は合成皮革に比べるとその生産量が少なく,しかも大部分が靴の甲材料として消費され,一部がかばん,ランドセル,ベルトなどに使われている。次の衣料用素材同様に海外での評価が高く,技術的にも世界のトップレベルを行くもので,輸出も多い。合成皮革に比べると,靴の甲材料に適するようにつくられているため,一般に成型性,耐屈曲性,耐摩擦性に優れ,しかも透湿性も大である。

 スエード調衣料用素材は大部分が衣料に使われ,一部雑貨や靴の甲材料に使われるが,生産量が少なく,しかも輸出が多いため国内の消費量は少ない。この素材は極細繊維で表面がおおわれているため,合成皮革などのスエードに比べ感触,風合いがはるかに優れ,天然皮革のスエードと外観,感触などからは区別しにくく,しかも色落ちが少なく,カビがはえず,しわになりにくく,寸法も安定していてドライクリーニングも可能である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「合成皮革」の意味・わかりやすい解説

合成皮革
ごうせいひかく
synthetic leather

人造皮革、人工皮革や擬革ともいう。ポリ塩化ビニルレザーの改良品として高級化されたものである。織布または不織布の表面層の材料によってポリウレタン系、ポリアミド系およびポリアミノ酸系に大別され、もっとも多いのはポリウレタン系である。製造方法は、雛(ひな)型紙上にポリウレタン溶液を塗布し、乾燥させたあとにさらに必要に応じて発泡剤を添加したポリウレタン溶液を塗布し、加熱発泡させたのち、ふたたびポリウレタン溶液を加えてサンドイッチ構造をつくりあげる。その後、織布または不織布上に先のウレタン層を接着し、雛型紙を剥離(はくり)して表面仕上げをする。発泡製品と乾式製品とがある。なお、天然皮革代替品として人工皮革が最近急速に進歩している。

[垣内 弘]

『日本技術士会監修、水野淳著『モダンエンジニアリングライブラリー 不織布および合成皮革』(1970・地人書館)』『日本化学会編『一億人の化学6 ファッションと化学』(1992・大日本図書)』『出口公長著『皮革あ・ら・か・る・と』(1999・解放出版社)』

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百科事典マイペディア 「合成皮革」の意味・わかりやすい解説

合成皮革【ごうせいひかく】

化学的に合成した高分子物質を用いてつくった天然皮革類似品。ナイロンを塩化カルシウムのメタノール飽和溶液に溶解させ,布や不織布等の基材に塗布,乾燥後水に浸漬(しんせき)して塩化カルシウムを溶出し,微細孔を生じさせて天然皮革同様の通気性をもたせたもの,発泡性ポリウレタンを上記基材に塗布したものなどがある。1960年代になって各種の製品が市販されるようになった。丈夫で手入れも簡単で,靴の甲革,かばん,袋物,いす張り材料などに広く利用される。
→関連項目皮/革剥離紙皮革工業レザー

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化学辞典 第2版 「合成皮革」の解説

合成皮革
ゴウセイヒカク
synthetic leather

ビニルシートにポリアミドポリウレタンまたはポリアミノ酸膜をコートしたもの.レザー,人工皮革と区別するとこのように定義されるが,明確な基準はなく,人造の皮革類似品を総称することがある.[別用語参照]擬革

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「合成皮革」の意味・わかりやすい解説

合成皮革
ごうせいひかく

人工皮革」のページをご覧ください。

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