同治中興(読み)どうちちゅうこう

精選版 日本国語大辞典 「同治中興」の意味・読み・例文・類語

どうち‐ちゅうこう【同治中興】

中国の清末、穆宗(ぼくそう)の同治年間(一八六二‐七四)の治世をいう。太平天国乱後、政治情勢が一時安定し、地方では曾国藩李鴻章ら漢人洋務派官僚が盛んに軍需工業を興して清朝復興の観を呈した。

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デジタル大辞泉 「同治中興」の意味・読み・例文・類語

どうち‐ちゅうこう【同治中興】

中国で、の同治年間(1862~1874)に行われた政治改革。表面的には、太平天国の乱も平定され内治・外交とも小康状態を保った時期で、曽国藩李鴻章らの漢人官僚による洋務運動が推進され、清朝は一時的に安定した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「同治中興」の意味・わかりやすい解説

同治中興
どうちちゅうこう

中国、清(しん)朝の同治帝(在位1861~75)の統治期をいう。1864年に太平天国を鎮圧したのち、華北の捻(ねん)軍や貴州の苗(ミャオ)族、ついで西北の回(イスラム)教徒反乱を鎮圧して、相対的・一時的に平穏が回復し、曽国藩(そうこくはん)、李鴻章(りこうしょう)、左宗棠(さそうとう)ら、湘(しょう)軍、淮(わい)軍を率いた漢族官僚が各省の督撫(とくぶ)として支配秩序の再建にあたり、洋式軍事工業を建設して、清朝が再興するかに思われた。また北京(ペキン)条約締結、咸豊(かんぽう)帝の死去直後、西太后(せいたいこう)と恭親(きょうしん)王らが宮廷政変によって、前帝側近の頑固な保守排外派を処刑、追放して宮廷の実権握り総理衙門(がもん)を中心に、対外協調政策を進めて、列強との比較的平和な関係が生まれた。これらの理由により、この時期を同治中興と称し、曽、李、左らは中興の名臣とたたえられた。しかし、この間、政治制度や教育制度の本質的な改革は行われず、不平等条約改正への努力もなされなかった。列強の経済進出の拡大と相まって、これが、この時期の末期に始まった一般近代工業の建設の成果を、日本同時代の殖産工業政策と比べて、かなり貧しいものに終わらせる要因となった。

[小島晋治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「同治中興」の意味・わかりやすい解説

同治中興
どうちちゅうこう
Tong-zhi zhong-xing; T`ung-chih chung-hsing

中国,清末の同治時代 (1862~74) に,前代太平天国アロー戦争に代表される内憂外患が一応治まり,政治や社会が比較的安定した状態をいう。この時代は,同治帝を擁する西太后らの摂政のもとに始り,恭親王奕 訢 (えききん) が内治外交の実権を握り,総理衙門を設けたりして外国和親策を進めた。また一方では,曾国藩や李鴻章らが要職について洋務運動 (→洋務派 ) を推進し,西洋の軍事技術をはじめとする文物の導入に努めて軍備の増強,工業の振興,通信運輸設備の充実,学堂の設置,留学生の派遣などを進めた時代であった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「同治中興」の解説

同治中興(どうちちゅうこう)

清末,同治年間(1862~74年)の内治外交が小康状態を保ち,清朝政権が安定を取り戻した状態をいう。アロー戦争後,内治外交の実権を握った恭親王奕訢(えききん)を中心に,太平天国や捻匪(ねんぴ)(捻軍)の討伐に活躍した曾国藩(そうこくはん)李鴻章(りこうしょう)左宗棠(さそうとう)などの洋務派官僚によって,軍備,工業,運輸などの近代化が進められた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「同治中興」の解説

同治中興
どうちちゅうこう

清の同治帝の治世(1861〜75)に対する呼称
1860年の北京条約締結以後,清朝では洋務運動が進められ,太平天国その他の内乱を平定することに成功し,表面的には同治年間(1862〜74)に内政・外交が安定期となった。この時期,恭親王奕訢 (きようしんおうえききん) を中心に,漢人官僚の曾国藩・李鴻章 (りこうしよう) ・左宗棠 (さそうとう) らが協力し,外国使臣の謁見や留学生の海外派遣,西欧文化の吸収や近代的軍備などが推進された。

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百科事典マイペディア 「同治中興」の意味・わかりやすい解説

同治中興【どうちちゅうこう】

中国で清末の同治帝時代(1861年―1875年)に内治・外交上の安定を一時的に回復したこと。アロー戦争,太平天国などの内憂外患がおさまり,洋務運動が推進され,恭親王や漢人官僚のもとに小康状態を保ち自強の促進を図った。

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