君主主権(読み)くんしゅしゅけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「君主主権」の意味・わかりやすい解説

君主主権
くんしゅしゅけん

主権君主にあるという原理をいう。君主は対外的には国家を代表し、対内的には統治権を掌握する。その地位原則として世襲である。この君主の有する権力の総体が君主主権である。君主主権を理論的に基礎づけたのはフランスの法学者ジャン・ボーダン(1529/30―96)の『国家論六篇(ぺん)』である。彼は主権を絶対的・恒久的権力と定義し、その内容として立法権、宣戦講和権、官吏任免権、最高裁判権、忠誠服従要求権、造幣度量衡選定権、課税権を位置づけ、君主主権原理に基づく近代民族国家の理論を確立した。代表的なフランス絶対王政はこの理論に支えられていたといってよい。フランス革命は「あらゆる主権の原理は、本質的に国民に存する」(人権宣言3条)として君主主権の原理を否定し、国民主権原理を確立した。

[畑 安次]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「君主主権」の意味・わかりやすい解説

君主主権
くんしゅしゅけん
Fürstensouveränität

主権は君主にあるとする国家原理で,国家の統治のあり方を究極的に決定する権威ないし力が君主にあることを意味する。もとは君主のもつ権力の至高性,絶対性を意味した。人民主権 (→国民主権 ) に相対する。絶対主義を支えた概念であり,いわゆる王権神授説や,旧憲法下での天皇制もその一つであった。

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