吸江寺(読み)ぎゆうこうじ

日本歴史地名大系 「吸江寺」の解説

吸江寺
ぎゆうこうじ

[現在地名]高知市吸江

五台ごだい山の西麓にある。臨済宗妙心寺派。五台山と号し、本尊聖観音。古くは吸江庵と称した。文保二年(一三一八)夢窓疎石が鎌倉幕府執権北条高時の母覚海の招きを避けて当地に下り、草庵を営んだのに始まる。夢窓疎石は足利尊氏の崇敬を受けたため、草堂には尊氏の守本尊地蔵菩薩を安置したという。夢窓疎石は二年で当地を離れたが、その跡を疎石の高弟義堂周信・絶海中津など、五山文学を代表する高僧が継ぎ、南海名刹として名を高からしめた。さらに南北朝・室町時代の足利氏の政権確立過程のなかで、その保護のもとに地位も高まった。

以下吸江寺文書によると、吸江庵は創建当初五台山竹林ちくりん寺の支配下に置かれていたが、康永二年(一三四三)七月一二日付の二通の寄進状(寄進者不明)によると「土佐国稲吉名」「土佐国乙松名」のそれぞれ地頭職が寄進されている。文和二年(一三五三)より数年前に、左川道覚は五台山の「限東八葉国見石、限南法師崎、限西海、限北トオルハエ」の地を分割し、吸江庵に寄進しているが(文和二年二月一二日「左川道覚寄進状案」)、この時が吸江庵独立の年といわれる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の吸江寺の言及

【土佐国】より

…熊野についで全国に教線を延ばした伊勢御師の布教活動は応仁の乱後に顕著となり,戦国・織豊期の土佐にはその痕跡がとくに濃厚である。禅宗では夢窓疎石の開いた吸江寺(ぎゆうこうじ)が室町幕府官寺制度における土佐唯一の諸山の寺格にあり,土佐禅林文化の中心であった。他の国人領主層の外護した禅寺には大平寺(一条氏),細勝寺(細川氏),長林寺(津野氏),妙蓮寺(大平氏),雪蹊寺(長宗我部氏),浄貞寺(安芸氏),予岳寺(山田氏)などがある。…

※「吸江寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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