日本大百科全書(ニッポニカ) 「和田伝」の意味・わかりやすい解説
和田伝
わだでん
(1900―1985)
小説家。本名伝(つとう)。地主の長男として神奈川県に生まれる。県立厚木中学校から早稲田(わせだ)大学高等予科に入り、1923年(大正12)文学部仏文科を卒業。その年、処女作『山の奥へ』を発表、また『早稲田文学』編集に携わる。大正末から昭和初年にかけ、旧師吉江喬松(よしえたかまつ)らによる農民文芸会に参加。32年(昭和7)相模野(さがみの)の生家に帰り、『村の次男』(1934)あたりから本格的な作家生活に入る。第一創作集『平野の人々』(1936)に続く『沃土(よくど)』(1937)で第1回新潮社文芸賞を受賞。38年、農民文学懇話会が結成されると幹事長につくなど、戦争下にも日の当たる場所にいたが、作風は一貫して堅実さを示した。54年、伊藤永之介(えいのすけ)らと日本農民文学会をおこして初代会長となり、機関誌『農民』を発刊した。『日本農人伝』(1951~54)、『鰯雲(いわしぐも)』(1957)、『風の道』(1961)、『門と倉』(1972~74)などがある。
[高橋春雄]
『『和田伝全集』全10巻(1978~79・家の光協会)』