哨戒艇(読み)しょうかいてい(英語表記)patrol ship

翻訳|patrol ship

日本大百科全書(ニッポニカ) 「哨戒艇」の意味・わかりやすい解説

哨戒艇
しょうかいてい
patrol ship
patrol boat

おもに哨戒、監視、警備などの任務にあたる小型軽艦艇。10トン前後から数百トン、速力十数ノットから30ノットのものが大部分だが、1000トン以上の艦もある。港湾の内外、河川などの哨戒にあたるきわめて小型の艇を除き、船型に比して航洋性の優れたものが多い。一般に砲熕(ほうこう)兵器主体の軽兵装だが、大型艦には対潜兵装を備えたものがある。海上自衛隊は、港湾防備用の小艇(18トン、20ノット)を哨戒艇に類別していた。1960年代から30ノット級あるいはそれ以上の高速艇型がつくられ、40~50ノットの水中翼艇型も出現している。哨戒艇は広義には、対潜艦艇魚雷艇、砲艇、ミサイル艇、各種哨戒艇などを含む哨戒艦艇patrol vessels全般を意味し、2010年時点で海上自衛隊はミサイル艇を、アメリカ海軍は哨戒艇、高速哨戒艇、高速小型哨戒艇、河川用特殊作戦艇などをそれぞれ哨戒艦艇に分類している。

[阿部安雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「哨戒艇」の意味・わかりやすい解説

哨戒艇 (しょうかいてい)
patrol boat

哨戒に使用される小型の軍艦。対潜・対空用の排水量5000トン程度のものから,港湾河川で使われる数トンのものまであるが,一般には小型のものを指すことが多い。最近の哨戒艦艇は,ミサイル,魚雷,砲などを搭載した200~400トンの高速哨戒艦艇(30ノット以上)と,やや低速(25ノット程度以下)で哨戒,警備などを主とした艇とに分けられる。船体材料や機関の発達,船型や武器の研究発展によって性能が向上するとともに,艦艇としては比較的安価でもあるので,各国海軍でも哨戒艦艇を重視しているところが多い。エアクッション船や水中翼船も高速性などを利用して,哨戒艇として実用化されている例もある。海上自衛隊では警備艦の一種として,駆潜艇,魚雷艇,哨戒艇を総称して哨戒艦艇と呼んでいる。このうち哨戒艇は,強化プラスチック(FRP)製,全長17m,18トンのモーターボートで,20mm砲1門を装備している。
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百科事典マイペディア 「哨戒艇」の意味・わかりやすい解説

哨戒艇【しょうかいてい】

沿岸哨戒,局地護衛などを任務とする軍用高速艇。従来魚雷艇が,砲を主兵装とする高速砲艇,ホーミング魚雷や対潜前投兵器を装備する高速駆潜艇などに分化したもの。近年では水中翼艇も実用化されている。なお哨戒艦艇という場合は哨戒・護衛用の駆逐艦までを含めるが,日本の海上自衛隊では駆潜艇,魚雷艇,哨戒艇の3種を哨戒艦艇としている。
→関連項目軍艦警備艦

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「哨戒艇」の意味・わかりやすい解説

哨戒艇
しょうかいてい
patrol ship

主として沿岸防衛を任務とし,戦時には敵艦船の侵入,平時では領海侵犯,密輸船の取締りにあたる艦艇。 1950年代までは,魚雷を主要兵器とする魚雷艇と,20~40mm前後の機銃を装備した砲艇が多かったが,60年代になるとミサイル哨戒艇が実用化された。 67年 10月,アラブ連合共和国のソ連製オサ型,またはコマ型ミサイル哨戒艇がソ連製スティックス・ミサイルによって,イスラエル駆逐艦『エイラート』を撃沈し,SSM (艦対艦ミサイル) を積んだ哨戒艇が駆逐艦以上の大型艦を破壊できることが実証された。大きなものでも排水量 500t程度。アメリカ海軍のペガサス級は排水量 240t,速力 48kn,ハープーン・ミサイル8基,OTTメララ3インチ砲1門を装備している。海上自衛隊でも 93年から排水量 50t,速力 50knSSMB-1,ミサイル4基,20mmガトリング機関砲1門装備のハイドロフォイル型哨戒艇を導入している。

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