唐糸草子(読み)からいとそうし

改訂新版 世界大百科事典 「唐糸草子」の意味・わかりやすい解説

唐糸草子 (からいとそうし)

御伽(おとぎ)草子。渋川版の一つ鎌倉御所の唐糸(木曾義仲の臣手塚太郎光盛の娘)は,義仲に頼まれ源頼朝の命をねらううち,見破られて捕らえられ,松ヶ岡の尼寺に預けられる。尼公の計らいで信濃国へ逃れるが,武蔵国六所で梶原景時に捕らえられ,石牢に入れられる。娘の万寿は孝心あつく,鎌倉に赴き,鶴ヶ岡で11人の手弱女(たおやめ)たちとともに頼朝の面前で舞を舞い,その徳によりめでたく母を救い出し,母や乳母更科ともども本国に帰る。木曾義仲関係の作に《清水冠者》《木曾義高物語》などもある。12人の今様の上手が歌舞を奏でる詞章は,芸能資料として貴重。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐糸草子」の意味・わかりやすい解説

唐糸草子
からいとそうし

御伽草子(おとぎぞうし)。歴史上の人物を伝説的構成に変えた万寿姫の孝行美談で、第二次世界大戦前の尋常小学読本にも引用された。1183年(寿永2)源頼朝(よりとも)が木曽義仲(よしなか)を討とうとしたころ、鎌倉には唐糸という女房がいた。彼女は義仲方の手塚太郎の娘で、頼朝暗殺を企てるが、露見して尼寺に預けられる。尼公の手で寺を逃れるが、ふたたび捕らえられ石牢(いしろう)に入れられる。故郷にいた娘の万寿は鎌倉に出て鶴岡八幡(つるがおかはちまん)に祈り、石牢の母をひそかに養う。ときに鎌倉で12人の乙女を募り今様(いまよう)を謡わせたおりに、万寿が加わり、その今様に頼朝が感じ、褒美に母を許し、孝心をめでて信濃(しなの)手塚の里1万貫を与えた。

[渡邊昭五]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐糸草子」の意味・わかりやすい解説

唐糸草子
からいとぞうし

御伽草子 (おとぎぞうし) 23編の一つ。室町時代に成る。木曾義仲の家来手塚光盛の娘唐糸が源頼朝の暗殺の機をうかがううちに捕えられたのを,その娘万寿姫が舞の妙技によって救うという孝行談。舞徳説話。

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