唯円(読み)ゆいえん

精選版 日本国語大辞典 「唯円」の意味・読み・例文・類語

ゆいえん ユイヱン【唯円】

鎌倉中期の浄土真宗の僧。常陸河和田茨城県水戸市)の人。常陸泉慶寺の開基親鸞直弟子として門徒中でも重んじられた。親鸞の没後、その法語を集め「歎異抄」を著わしたといわれる。生没年未詳。

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デジタル大辞泉 「唯円」の意味・読み・例文・類語

ゆいえん〔ユイヱン〕【唯円】

鎌倉中期の浄土真宗の僧。常陸ひたち河和田かわだの人。親鸞しんらん弟子で、その没後の教団中心となった。「歎異抄」の著者とされる。同名門弟がいたことから、河和田の唯円とよばれた。生没年未詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唯円」の意味・わかりやすい解説

唯円
ゆいえん
(?―1288?)

生没年は一説に1222―1289年。鎌倉中期の浄土真宗の僧。親鸞(しんらん)の門弟。常陸(ひたち)国河和田(かわだ)(茨城県水戸市)の人。『親鸞伝絵』にみえる大部(おおぶ)の平太郎(へいたろう)(1195―1261)の弟で、俗名を平次郎、同地の報仏寺の開基と伝える。親鸞の曽孫(そうそん)覚如(かくにょ)の行状を記した『慕帰絵詞(ぼきえことば)』には、1288年(正応1)冬に上洛(じょうらく)し、親鸞から伝えられた法義を覚如に教示したことがみえている。『歎異抄(たんにしょう)』にも名がみえ、江戸末期からその著者に擬せられている。なお、親鸞門弟のうちに、同名の常陸国鳥喰(とりはみ)に住した唯円(生没年不詳)がある。

大桑 斉 2017年10月19日]

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朝日日本歴史人物事典 「唯円」の解説

唯円

没年:正応2.2.6(1289.2.27)
生年:貞応1(1222)
鎌倉中期の真宗の僧。親鸞の門弟で,『歎異抄』の執筆者として有名。京都に生まれる。小野宮禅念の子。仁治1(1240)年,親鸞に師事,師命により常陸国(茨城県)に赴き教化活動を行い,河和田(水戸市)に泉慶寺を開き住したことから,「河和田の唯円」と称される。文永11(1274)年に上洛し,大和国(奈良県)の教化を行い,吉野下市(吉野郡下市町)に一宇を造営した。正応1(1288)年の冬に再び上洛,本願寺覚如と法儀上の問題を語り合い,翌年吉野下市に寂す。泉慶寺はのちに報仏寺と改称,水戸市で旧跡を伝えている。

(草野顕之)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唯円」の意味・わかりやすい解説

唯円
ゆいえん

鎌倉時代の浄土真宗の僧。唯円開基と伝える茨城県河和田報仏寺の本尊台座銘には,正応1 (1288) 年8月8日没とあり,先啓著『諸寺異説弾妄』 (1771) には同2年2月6日,68歳没とある。『慕帰絵詞』『最須敬重絵詞』によると,同1年冬の頃,常陸国河和田の唯円が上洛し,本願寺3世覚如が平素抱いていた法門の疑問について唯円にただし,また親鸞の孫,唯善が師事したとあり,彼は鴻才弁説の名誉があったとある。親鸞の弟子で『歎異鈔』の作者として最も有力視されている。

唯円
ゆいえん

鎌倉時代の浄土真宗の僧。親鸞の弟子で,河和田の唯円に対し,鳥喰 (とりはみ) の唯円房と称する。親鸞門下 24輩の一人。彼を『歎異鈔』の作者とする説もある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「唯円」の解説

唯円
ゆいえん

1222~89.2.6

鎌倉中・後期の浄土真宗の僧。親鸞の直弟子で河和田(現,茨城県水戸市)の唯円と称される。親鸞の孫唯善(ゆいぜん)の師で,本願寺の覚如(かくにょ)から質問をうけたという。親鸞没後の異義の蔓延をなげき,親鸞の語録を集成して異義を批判した「歎異抄(たんにしょう)」を著したとされる。常陸国河和田の報仏寺は唯円の遺跡という。

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旺文社日本史事典 三訂版 「唯円」の解説

唯円
ゆいえん

生没年不詳
鎌倉中期の浄土真宗の僧
常陸 (ひたち) (茨城県)の人。親鸞の直弟子として門徒中でも重んじられた。親鸞の法語を集めた『歎異抄』を著し,師の真意を伝えた。

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世界大百科事典(旧版)内の唯円の言及

【歎異抄】より

…1巻。編者は親鸞門弟の常陸国河和田の唯円(ゆいえん)。親鸞没後の真宗教団において,師説にそむく異端の発生を嘆き,誤りをただして正統を示し,念仏者の不審を明らかにしようとしたもの。…

※「唯円」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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