喀血(読み)カッケツ(英語表記)hemoptysis

デジタル大辞泉 「喀血」の意味・読み・例文・類語

かっ‐けつ〔カク‐〕【×喀血】

[名](スル)気管支などから出血して血を吐き出すこと。肺結核肺癌はいがん気管支拡張症などでみられる。→吐血とけつ

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改訂新版 世界大百科事典 「喀血」の意味・わかりやすい解説

喀血 (かっけつ)
hemoptysis

気道または肺から血液を喀出する(吐き出す)ことをいう。ごく少量から1lにも達するものまでさまざまであり,痰に血液が少量混じる程度のものは血痰という。出血部位は喉頭,気管,気管支,肺実質などさまざまであり,気管支拡張症肺結核,各種の肺炎肺癌気管支炎肺化膿症肺梗塞(こうそく)などが,鑑別すべき疾患である。気管支拡張症は,全年齢層を通じて喀血,血痰の最も頻度の高いものである。高齢者では,肺癌の初発症状である場合が少なくない。しかし,喀血や血痰を訴える患者の半数近くは,検査によっても異常が認められず,原因不明であり,その多くは鼻腔,歯肉,咽頭,喉頭などからの一時的出血であることが多い。急性気管支炎では感冒様症状で始まり,血痰,きわめてまれに喀血を伴うことがあるが,2~3日で出血が止まり,再び出ることはない。

 喀血したと思われるときには,まず鼻,咽腔など上気道からの出血でないこと,さらに消化管出血吐血)でないことを確認することがたいせつである。喀血の血液は,通常鮮紅色で,泡をもち,咳とともに喀出され,凝固せず,アルカリ性である。これに対し吐血では,咳を伴うことはなく,黒赤色で,かつ酸性で,通常酸臭を伴い,しばしば食物残渣を含む。

 喀血は見かけ上大量であっても,通常,致死的な失血に至ることはない。大量喀血の死因の多くは,衰弱した患者の気道内に血液が停留することによっておこる窒息である。このため,大量の喀血では,出血側が推定できるなら,出血側を下に,側臥位となり,患部を冷湿布する。出血は時がたてば止まるものである。止血剤鎮静剤を投与するが,繰り返すものや,喀血が容易に止まらないものでは,喀血源の気管支に血液を供給している気管支動脈の充塡閉塞術embolizationや,手術が緊急処置として行われる。出血源の確認には気管支ファイバースコープが有効である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「喀血」の意味・わかりやすい解説

喀血
かっけつ

血液の全成分が血管外に出ることを出血とよび、その部位により各種に分類される。喀血もこの分類のなかの一つで、肺や気管支から出血して吐き出されたものをいう。一方、胃や食道などの消化管から出血して吐き出されたものは吐血(とけつ)とよばれ、喀血と吐血の区別は臨床的に重要である。喀血は鮮紅色で泡を含むのに対し、吐血は暗赤色で泡はなく、食物の残渣(ざんさ)を含むことが多い。吐血は混入する胃液のため酸性反応を呈するが、喀血はアルカリ性である。また吐血の場合は、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などの胃症状を伴うが、喀血は、咳(せき)、痰(たん)などの呼吸器症状を訴え、喀血後しばしば血痰を呈する。睡眠中におこった喀血は、飲み込まれたのち、胃から嘔吐されることもあるので注意を要する。

 喀血は呼吸器疾患にしばしばみられる重要な症状で、咽喉頭(いんこうとう)から肺に至る気道のどこの病変からもおこりうる。頻度の多い場合は肺結核、あるいは肺癌(がん)に対する注意をしなければならない。そのほか、喀血を伴う疾患として次のようなものがある。激しい咳による気道の損傷、肺嚢腫(のうしゅ)、気管支拡張症、肺炎や肺ジストマ症などのような感染症、肺梗塞(こうそく)、僧帽弁狭窄(きょうさく)症による肺の出血やうっ血に伴うもの、また結節性動脈周囲炎などの肺内血管の病変、さらに出血傾向を呈する血液疾患などである。したがって喀血を認めたら、呼吸器系、心血管系、血液系を対象に詳細な検査を行って、喀血の原因を確かめなければならない。

渡辺 裕]

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六訂版 家庭医学大全科 「喀血」の解説

喀血
かっけつ
Hemoptysis
(外傷)

 原因としては結核(けっかく)肺がん気管支拡張症などの病気が一般的ですが、外傷の時に起こる喀血は、胸部の外傷、すなわち肺挫傷(ざしょう)、気管・気管支損傷などの時に起こります。

 応急処置としては、窒息(ちっそく)を防ぐよう気道確保が中心になります。少量であれば、自然に止血することも多いのですが、量が多いと呼吸不全や窒息を起こすことがあるので、病院に搬入後は、気管挿管(そうかん)と呼ばれる気道確保ののち、人工呼吸を行ったり、気管支鏡を用いた止血術を行うことがあります。

 場合によっては、カテーテルによる血管内治療(TAE)が止血の手段として用いられることもあります。

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百科事典マイペディア 「喀血」の意味・わかりやすい解説

喀血【かっけつ】

気管,気管支,肺の病巣からの出血が口から吐き出されること。喀血を起こす病気には,肺癌,気管支拡張症,肺結核,慢性気管支炎,肺梗塞(こうそく),肺炎などがある。吐血と異なって咳(せき)を伴うことが多く,鮮血色であわを混ずることが多い。
→関連項目溺死

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「喀血」の意味・わかりやすい解説

喀血
かっけつ
hemoptysis

肺,気管支から喀出される血液。喀血の 90%は肺結核によるが,結核の激減とともに,最近はほとんど見られなくなった。少量の喀血の場合は肺癌,肺梗塞など重要な呼吸器疾患の症状であることが少くない。血液は鮮紅色で,泡が混り,凝固しにくい。消化管系からの出血である吐血の場合は,胃酸の作用を受けて黒褐色になることが多いが,両者の鑑別は必ずしも容易ではない。

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普及版 字通 「喀血」の読み・字形・画数・意味

【喀血】かくけつ

血をはく。

字通「喀」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「喀血」の解説

喀血

 気管支もしくは肺からの出血を口から吐くこと.肺結核などが原因となる.

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世界大百科事典(旧版)内の喀血の言及

【消化管出血】より

…一般に,食道からの大出血以外は,ヘモグロビンが胃液と反応して塩酸ヘマチンとなるので,褐色の沈殿をもつコーヒー残渣様吐物となる。このため新鮮血を吐く喀血とは区別できる。原因としては,胃潰瘍,十二指腸潰瘍が最も多く,出血性胃炎,食道静脈瘤が次ぎ,胃癌でも吐血することがある。…

※「喀血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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