善知識(読み)ゼンチシキ

デジタル大辞泉 「善知識」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐ちしき【善知識/善×智識】

《「ぜんぢしき」とも》
仏語。人々を仏の道へ誘い導く人。特に、高徳の僧のこと。真宗では門弟法主ほっすを、禅宗では参学の者が師家しけをいう。⇔悪知識
人を仏道へ導く機縁となるもの。
「これ―なり。しかじ、憂き世を厭ひ、まことの道に入りなん」〈平家・一〇〉

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改訂新版 世界大百科事典 「善知識」の意味・わかりやすい解説

善知識 (ぜんちしき)

知識というのは知合い,友だちの意味。善友ともいう。悪知識に対する語である。仏教ではとくに指導者をさす場合が多い。これは《摩訶止観(まかしかん)》に3種の善知識を説き,一は外護(げご)の善知識でパトロンとなるもの,二は同行(どうぎよう)の善知識で友人のこと,三は教授の善知識で指導者をさすからである。しかし日本では,この語は主として浄土教で用い,念仏講や同行の指導者をさしている。そして善知識の勧めにしたがえばかならず往生できるという信仰が生じた。これを〈善知識だのみ〉といい,浄土真宗はこれを異端邪義とする。また一方では,念仏の同行はすべて善知識だという思想がある。これは互いに信仰を勧め合うからで,同行即善知識である。これをなお一歩すすめて,自分に不幸を与えた敵も,その不幸を機縁として信仰に入った場合は,逆縁の善知識とする。要するに仏教では,信仰を教えたり勧めたりする者は,すべて善知識である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「善知識」の意味・わかりやすい解説

善知識
ぜんちしき
kalyāṇamitra

仏教用語。勝友,善親友,知識などと訳される。もとは「善い友人」の意。正法を説いて人を導き入れ,仏道に精進させて解脱させる賢人のこと。禅宗では師家を善知識と呼ぶ場合がある。

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