喘息性気管支炎(読み)ぜんそくせいきかんしえん(英語表記)asthmatic bronchitis

改訂新版 世界大百科事典 「喘息性気管支炎」の意味・わかりやすい解説

喘息性気管支炎 (ぜんそくせいきかんしえん)
asthmatic bronchitis

喘息様気管支炎ともいう。乳幼児(ことに1~2歳)にみられ,風邪から気管支炎を起こしたもので喘鳴がつよく,いつまでもゼイゼイといってなかなか治りにくいものをいう。寒い時期に多く,風邪をひくたびに繰り返すことから反復性気管支炎ともいう。気管気管支粘膜が,感染や寒冷などの刺激に対して過敏で,滲出性反応を起こしやすく,たまった痰を喀出できないため気道が狭くなり,気管支喘息に似た症状が出現する。しかし,気管支喘息のような呼吸困難はないか,あっても軽い。これは気管支喘息にみられるような気道自体の収縮があまりないためである。予後は良好で就学するころになると自然に消失する。しかし一部は気管支喘息へ移行するものもみられる。予防としては,疲れたとき人ごみの中へ出ないこと,寒冷にさらされないことなどであり,治療としては,吸入療法去痰薬,抗生物質,抗ヒスタミン薬の投与などが行われる。なおアレルギー性気管支炎,乳児期気管支喘息,初期小児気管支喘息と鑑別がむずかしいため,混同して診断されている場合が少なくない。
気管支喘息
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「喘息性気管支炎」の意味・わかりやすい解説

喘息性気管支炎
ぜんそくせいきかんしえん

喘息様気管支炎ともいい、乳幼児で喘鳴(ぜんめい)を主とし、呼吸困難はないか、あっても軽度で、反復性の一般に予後良好な喘息類似の症状を呈する気道疾患につけられた症候群名で、独立した疾患名ではない。小児、とくに年少の乳幼児では、成人に比べて気管支内腔(ないくう)が狭く、反応性も高いため、種々の要因によって容易に喘鳴、気道狭窄(きょうさく)症状を呈する。したがってこの診断名は、小児科の実地臨床でよく用いられている。このなかには反復性気管支炎、アレルギー性気管支炎(喘息前段階)、軽症型気管支喘息、慢性気管支炎などの種々の気道疾患が含まれており、この診断名は用いるべきでないという考えが強い。成人においても喘鳴と呼吸困難を伴う疾患を正しく診断することはかならずしも容易でなく、喘息性気管支炎という診断名を用いることがあるが、呼吸器疾患研究者の大多数は独立疾患名としてこの診断名を用いることに賛成していない。

[山口智道]

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世界大百科事典(旧版)内の喘息性気管支炎の言及

【公害病】より

…(1)第一種地域 事業活動その他の人の活動に伴って,相当範囲にわたる著しい大気の汚染が生じ,その影響による疾病が多発しているが,汚染物質と健康被害との間に特異的な関係がなく,被害者個々人について原因物質を特定することが困難な疾病の多発した地域として指定されているもので,東京都19区,川崎2区,四日市臨海地域,大阪市全域,北九州市洞海湾地域など41地域が指定地域となっている。疾病としては,慢性気管支炎気管支喘息喘息性気管支炎肺気腫とこれらの続発症が定められており,3年間以上これらの地域に居住または通勤した者が指定疾病にかかっている場合に認定されることになっている。認定は,認定を受けようとする者の申請に基づき,指定地域を管轄する都道府県知事,政令市(区)長が医師,法律家などの専門家による公害健康被害認定審査会の意見を聴いて行うことになっている。…

※「喘息性気管支炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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