嗅脳(読み)きゅうのう(英語表記)rhinencephalon

精選版 日本国語大辞典 「嗅脳」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐のう キウナウ【嗅脳】

〘名〙 脊椎動物大脳底部の嗅覚をつかさどる部分。嗅球、嗅結節、梨状葉などを含む。大脳皮質としては由来の古い古皮質に属し、円口類魚類では大脳半球大部分を占めるが、高等動物になるに従って占める部分は小さくなる。臭脳。

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デジタル大辞泉 「嗅脳」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐のう〔キウナウ〕【嗅脳】

大脳底部の嗅覚に関与する領域嗅神経の入ってくる部分にある。旧皮質に属し、両生・爬虫はちゅう類では広く占めるが、人間では退化して小さい

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改訂新版 世界大百科事典 「嗅脳」の意味・わかりやすい解説

嗅脳 (きゅうのう)
rhinencephalon

大脳の一部で,嗅覚に関与する狭義の嗅脳(嗅葉,前有孔質,扁桃体,梨状葉などが含まれる)と,それに情動や性的機能が加わり複雑に発達した広義の嗅脳(海馬とその隣接領域が含まれる)とがあり,つねに同じ意味で語られているわけではない。動物の進化にともない左右大脳皮質を連絡する繊維脳梁)が嗅脳の背側に発達するので,両生類爬虫類では脳表面から見えるが,ヒトの嗅脳は外側からはほとんど見ることができない。なお狭義の嗅脳は,水中生活をするクジラ類では発達が悪く,消失している場合もある。〈嗅脳〉は,終脳底部にある古い皮質部分を多く含んでおり,生理学的意味あいの強い言葉である。しかし解剖学的には,嗅脳に属する多くの部分が特別に嗅覚に関係しているとは言いがたいので,好んで使用されるべき言葉ではない。

 嗅覚関連領域に当たる狭義の嗅脳をいわゆる嗅覚反射系部分と大脳皮質部分とに分けて考えると,嗅上皮からの刺激をうける嗅球と,それにつづく嗅索,嗅結節,前有孔質,中隔部,あるいは梨状葉などの配列は本質的には似ているが,大脳皮質の嗅覚野に関しては動物により大きな差があり,サルやヒトでは,嗅覚刺激は視床背内側核や視床下部付近を経由して眼窩(がんか)面前頭皮質に至り認知されるといわれている。
嗅覚 →
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「嗅脳」の意味・わかりやすい解説

嗅脳
きゅうのう
rhinencephalon

脳における嗅覚に関係する領域で,動物では発達しているが,ヒトでは,大脳半球底面において前頭葉から側頭葉にかけて存在する痕跡的な部分。嗅球,嗅索,嗅三角から成る前部と,前有孔質と終板傍回から成る後部に分けられる。広義にはさらに脳弓を加えたものをさす。

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世界大百科事典(旧版)内の嗅脳の言及

【大脳皮質】より

… 以上は新皮質(等皮質または同種皮質)と呼ばれる大脳皮質の基本的構造であるが,そのほかに,発生のいかなる時期にも定型的6層形成を示さない古い皮質(不等皮質または異種皮質)と呼ばれる領域がある。嗅脳(広義)と呼ばれる領域は後者に属する。
[皮質区分と機能局在]
 大脳皮質は部位的構造に差異があり,20世紀初頭にキャンベルA.W.Cambell,ブロードマンK.Brodmann,フォークトC.& O.Vogt,エコノモC.von EconomoとコスキナスG.N.Koskinasらによって,ヒトや動物の皮質の構築学的研究がなされた。…

【大脳辺縁系】より

…本来,嗅覚(きゆうかく)との関連において発達をとげた脳の系統発生的に古い皮質部分で,おおよそ広義の嗅脳に相当する。辺縁系という用語は主として比較解剖学的研究を基にして名づけられた辺縁葉limbic lobeに由来するが,この辺縁葉という言葉は,1878年P.ブローカが,室間孔の周囲を環状にとりまいている脳の中心部分に対してle grand lobe limbiqueという名称を与えたのに始まるとされている。…

※「嗅脳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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