四依(読み)シエ

デジタル大辞泉 「四依」の意味・読み・例文・類語

し‐え【四依】

《〈梵〉catvāry apāśrayaṇāniの訳》
比丘びくがよりどころとすべき法を四つに分けたもの。依法不依人・依義不依語・依智不依識・依了義経不依不了義経。
修行の際によるべき4種の行法。糞掃衣ふんぞうえを着、乞食こつじきをし、樹下に座り、腐爛ふらん薬を用いること。
衆生しゅじょうがよりどころとする4種の人。小乗では、出世凡夫ぼんぶ預流よる一来いちらいの人、不還ふげんの人、阿羅漢の人。大乗では、地前を初依、初地より五地までを二依、六・七地を三依、八・九・十地を四依とするほか、諸説がある。

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精選版 日本国語大辞典 「四依」の意味・読み・例文・類語

し‐え【四依】

〘名〙 (catvāri pratisaraṇāni の意訳。「え」は「依」の呉音) 仏語。四つの依(よ)りどころとなるもの。
① 法の依りどころとなる四つ。比丘(びく)が依りどころとすべき法を四つに分けたもの。教えそのものを依りどころとし、教えを説く人を頼りにしてはいけない(依法不依人)、教えの意味に依り、ことばにとらわれてはいけない(依義不依語)、仏の智慧に依り、人間の情識に依ってはいけない(依智不依識)、教えの意味を完全に伝えている大乗経典に依り、小乗経典に依ってはいけない(依了義経不依不了義経)の四つの総称
※日蓮遺文‐守護国家論(1259)「四依慧燈日減、三蔵法流月濁」
② 行の依りどころとなる四つ。修行者が修行の際に依るべき四種の行法。糞掃衣(ふんぞうえ)を着、常に乞食(こつじき)し、樹の下にすわり、腐爛薬を用いることの四つ。
※正法眼蔵(1231‐53)出家功徳「その出家行法に四種あり、いはゆる四依なり」
③ 人の依りどころとなる四つ。衆生が依りどころとする四種の人。小乗では、出世の凡夫(ぼんぶ)、預流(よる)と一来(いちらい)の人、不還(ふげん)の人、阿羅漢(あらかん)の人の四種。大乗では、地前を初依、初地より五地までを二依、六・七地を三依、八・九・一〇地を四依とするほか、諸説がある。
往生要集(984‐985)大文八「明知、『契経』多以念仏往生要、若不爾者、四依菩薩即非理尽
④ 説の四依。仏の説法における四種の秘密をいう。
⑤ 二乗が依りどころとする四諦。〔勝鬘経‐顛倒真実章〕

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世界大百科事典(旧版)内の四依の言及

【仏教】より

…戒の条項は比丘で250,比丘尼では348とされる(部派により異なる)が,元来は随犯規制といって,その行為が問題として取り上げられるたびにしだいに増加したとされる(初犯は規定以前なので罰せられない)。後者,教団運営の規則類には,会議運営のやり方とか,出家受戒作法その他,布薩(一定の日に日頃の行為を懺悔する),安居(あんご)(毎年雨季に全員集まって修行する)などの行事の規定,修行者の生活資具としての四依(衣は糞掃衣(ふんぞうえ),食事用の鉢,住居は樹下石上,薬は陳棄薬による)の規定などがある。会議の運営は全員一致を旨とし,そのため会議の種類に応じて人数を決め,そのつどサンガの人員を確認した(たとえば,入門のための受戒の儀式には10人以上の成人修行者の出席を必要とするなど)。…

※「四依」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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