四大(読み)シダイ

デジタル大辞泉 「四大」の意味・読み・例文・類語

し‐だい【四大】

仏語。万物の構成要素とされる、の四つの元素。四大種
1から構成されるとするところから》人間の肉体。
「―の身を悩ます病は」〈鴎外寒山拾得
道教で、道・天・地・王をいう語。

よん‐だい【四大】

俗に、4年制の大学のこと。短大に対していう。→大学1

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精選版 日本国語大辞典 「四大」の意味・読み・例文・類語

し‐だい【四大】

[1] 〘名〙
① 仏語。地・水・火・風の四元素。すべての物体はこの四つから成り立つとする。四大種。〔勝鬘経義疏(611)〕
② (人体は①によって構成されるとするところから) 人間の肉体。身体。
※観智院本三宝絵(984)下「四大に病なくして生る所に清浄にして顔かたち麗しく浄し」
歌舞伎・上総綿小紋単地(1865)四幕「四大おとろへ三魂まどひ」
③ (「老子‐二五」の「道大・天大・地大・王亦大、域中有四大、而王居其一焉」から) 宇宙に存在する四つの最も大きなもの、すなわち道・天・地・王をいう。
④ 四つの根元としての水・木・土・火。①と五行(ごぎょう)の木火土金水とを結びつけたものか。
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)三熊野「水を仮り成たはぶれも終には迷ひの井堰(ゐせき)にからみ、木は執心の斧に砕かれ土は逢ふ夜の壁とへだたり、火は又三世の縁を焼く。四大の四苦を此身一つに重ね」
※浄瑠璃・心中天の網島(1720)中「小春に縁切思切、偽申すに於ては上は梵天帝釈下はしだいの文言に、仏揃へ神揃へ紙屋治兵衛名をしっかり」

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改訂新版 世界大百科事典 「四大」の意味・わかりやすい解説

四大 (しだい)

仏教で説く物質の構成要素のことで,地,水,火,風の4種をさす。〈大〉または〈大種〉はサンスクリットmahā-bhūtaの漢訳語である。〈地大〉とは堅さを性質とし物質を保つもの,〈水大〉とは湿性をもつもの,〈火大〉は熱を性質とし成熟の作用をもち,〈風大〉は動作を性質とする。これら四大のそれぞれの名称,性質,作用などについては,古代インドにおいて古くから諸説があり,また,仏教の中にも異説がある。四大にさらに〈空大(くうだい)〉を加えて〈五大〉とすることもある。空大は物質の存在する場所を要素として数えたものである。人間の身体も四大または五大より成っているので,肉体のことを四大とも五大ともいう。また密教では認識作用の〈識大(しきだい)〉を加えて〈六大〉とし,一切万有・全宇宙の構成要素とする。
執筆者:

西洋では四大とは,〈四大元素four elements〉すなわち土,水,火,空気を指す。アリストテレス哲学では,四大は乾,湿,熱,冷という四つの基本性質と配合され,土は乾と冷,水は湿と冷,火は乾と熱,空気は湿の熱の組合せに対応する。つまり四大は日常の具体的物質というより,物質の形で想定された自然の構成原理である。このような意味での元素観タレスに始まり,ヘラクレイトス,エンペドクレスらを経て上記の説に至った。各元素は固定的な実体ではなく,相互に流動,変化,循環を行い,その対立や調和が自然の理法をなす。このような性質に従い,各元素の属性の配合を人為的に変えることで物質変容を促進しようとしたのが錬金術である。四大の象徴性は時代とともに多層化し,占星術では人体を構成して気質を決定する四体液や四季と関連づけられ,黄道十二宮に配合された。一方魔術では,各元素には固有の精霊が棲み,それを通じて四大から成る宇宙を支配しうると信じられた。
化学 →元素 →錬金術
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「四大」の意味・わかりやすい解説

四大
しだい

仏教の術語。四大種とも。地・水・火・風の四大元素。インドでウパニシャッド時代から名称はあるが、仏教はこれをより精密に規定した。この四大は自然界の地・水・火・風ではなく抽象概念で、その本質はおのおの堅性・湿性・煖性(だんせい)・動性である。いっさいの物質はこの四大よりなり、そのうちのもっとも勢力の強いものが表面に現れるという。また人間の肉体を四大といい、これに空(くう)・識(しき)を加えて六界(六大)と称し、人間の精神と肉体のすべてを示すこともある。

[加藤純章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四大」の意味・わかりやすい解説

四大
しだい
catvāri mahābhūtāni

仏教用語。四大種の略。四元素の意。物質的現象を要素の点から4種に分類したもの。 (1) 地大 (堅固を本質とし,保持することをその作用とするもの) ,(2) 水大 (湿りけを本質とし,収め集めることをその作用とするもの) ,(3) 火大 (熱さを本質とし,成熟させることをその作用とするもの) ,(4) 風大 (動きを本質とし,成長させることをその作用とするもの) の4種。 (→五大 , 四元素論 )

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百科事典マイペディア 「四大」の意味・わかりやすい解説

四大【しだい】

(1)仏教の術語。四大種とも。地,水,火,風の4種で,〈地大〉は堅性,〈水大〉は湿性,〈火大〉は熱性,〈風大〉は動性を表す。〈空大〉を加えて五大,〈識大〉を加えて六大とも。人間の肉体を四大ともいう。(2)西洋では四大元素,すなわち土,水,火,空気をいう。

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普及版 字通 「四大」の読み・字形・画数・意味

【四大】しだい

道天地王。

字通「四」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の四大の言及

【エンペドクレス】より

…彼の哲学を解釈するにあたって,もっとも大きな問題はこの二つの著作の関係である。《自然について》は地水火風の四元素(四大)と,愛と憎という二つの力とを中心にして展開する宇宙論である。愛は四元素を結合する力,憎は分離する力であるが,この二つの力の勢力の消長交代によって宇宙は四つの時期に区分されながら永遠に回帰する。…

【賢者の石】より

…具体的物質というより,自然の根底に潜む精髄を凝縮した比喩的実体である。原物質prima materiaが混沌状態で含む四大(土,水,火,空気)を,〈賢者の石〉は精錬,純化した形で含んでいる。したがってそれは大宇宙に対する小宇宙であり,万物の生命を蔵する種子として,根源的な作用力をもつ。…

【数】より

… 4は四つの方向(4方位),四つの風,四季,自然,大地,キリスト教では楽園エデンから流れ出る四つの大河,四福音書,十字架の四辺などを表し,ギリシアでは全体性を表現する最小の数であった。地水火風の四元または四大は宇宙を構成する原理であり,それに対応して四つの体液が想定されたことから人間の性格や心理機能も四分割されて考えられることが多い。2組の対として,調和,平衡の意味もある。…

【風】より

…また,これとは別にある種の様式,方法,風采,風習,風潮などを意味する言葉としても用いられ,これが六義の〈風〉と習合したのか,芸術上の様式や流儀の意味に転じ,風体や作風の意味に用いられるようになった。なお,自然現象としての〈かぜ〉を〈風月〉などのように他のものと並称して賞美の対象とすることがあり,仏教では,一切の物体を構成する4元素としての四大(地,水,火,風)の一と考えている。【堀 信夫】
[義太夫節]
 義太夫節の様式を示す〈風〉には,座の風と太夫個人の風とがある。…

【方位】より

…各花びらにはその方位に関連する象徴的意味が付与され図が描きこまれた。 また四大との関係では,南に空気,東に火,西に水,北に地が結びつけられる。西洋オカルティズムではこの四大元素を媒介にして,中国の五行に似た色と精霊と方位の対応表も作られており,方位の吉凶占いが行われる。…

※「四大」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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