因幡氏(読み)いなばうじ

改訂新版 世界大百科事典 「因幡氏」の意味・わかりやすい解説

因幡氏 (いなばうじ)

古代因幡国の豪族。大化前代,因幡国法美郡稲羽郷を中心に高草郡,八上郡等にも一族を配して,広く因幡国中に勢力を張ったと推定される因幡国造の後裔。高草郡の浄成女とその一族が771年(宝亀2)に〈因幡〉の姓を賜って因幡氏が成立し,あわせて令制国造の地位を得た。同氏は鳥取県福井の天穂日命(あめのほひのみこと)神をまつり,平安中期にはともに正三位の神階を授けられた後の因幡国一宮宇倍(うべ)神社をまつる新興豪族伊福部(いほきべ)氏と激しく勢力を競った。平安末期,因幡氏は伊福部氏などとともに介を称して因幡国衙官人の中心的地位を占めていた。しかし1007年(寛弘4)国衙官人・百姓等にその非法と国司苛政を訴えられた国守橘行平は介因幡千里を殺害し,因幡氏は滅亡した。橘行平が因幡から持ち帰り京都因幡堂(因幡薬師)に安置したという薬師像は,もと高草郡衙近辺にあって因幡氏と関係の深かった薬師堂の本尊が,因幡氏滅亡後持ち去られたものと推定される。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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