図書寮(読み)ずしょりょう

精選版 日本国語大辞典 「図書寮」の意味・読み・例文・類語

ずしょ‐りょう ヅショレウ【図書寮】

〘名〙
① 令制官司の一つ。中務省(なかつかさしょう)に属して、宮中書籍・仏具の保管、図書の書写・製本を行ない、紙・筆・墨などを製造して諸司に給付し、また、国史の修撰をつかさどった役所。頭、助、大少允、大少属や写書手、装潢手、造紙手、造筆手、造墨手などから構成される。ふみのつかさ。ふんのつかさ。〔令義解(718)〕
② 明治一七年(一八八四)八月、皇室系譜ならびに帝室一切の記録を編修し、内外の書籍・古器物・書画の保存および美術に関すること等をつかさどるため、宮内省に設けられた一部局。のち、職掌、機構ともに変遷があったが、主として皇統譜の調製・保管、天皇・皇族実録の編修、公文書編纂・保管、詔勅その他重要文書の保管、図書の保管・出納等をつかさどり、昭和二四年(一九四九)諸陵寮と合併し書陵部となる。としょりょう。〔明治職官沿革表(1886‐94)〕

としょ‐りょう ‥レウ【図書寮】

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デジタル大辞泉 「図書寮」の意味・読み・例文・類語

ずしょ‐りょう〔ヅシヨレウ〕【図書寮】

律令制で、中務なかつかさに属し、書籍・経典や紙・筆・墨などを管掌し、また、国史編纂へんさんをつかさどった役所。ふみのつかさ。
明治官制宮内省に属し、主として皇統譜の編集、詔勅の保管などを管掌した役所。としょりょう。

ふみ‐の‐つかさ【図寮/司】

ずしょりょう(図書寮)
しょし(書司)

としょ‐りょう〔‐レウ〕【図書寮】

ずしょりょう(図書寮)

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改訂新版 世界大百科事典 「図書寮」の意味・わかりやすい解説

図書寮 (ずしょりょう)

(1)律令官制における中務省所属の役所。朝廷の図書・仏像・仏具・経典の保管,国史の修撰,書籍の書写・校正・製本,諸官庁で使用する紙・筆・墨などの文房具の製造と供給を任務とする。頭,助,大允,少允,大属,少属各1人の事務官と,写書手20人,装潢(そうこう)手4人,造紙手4人,造筆手10人,造墨手4人の技術指導者を擁し,紙すきに従事する紙戸50戸が付属する。大同年間(806-810)に別所として紙屋院(かみやいん)と称する紙すき場が置かれたが,律令制の衰退とともに,紙屋院での紙すきのみは,図書允を世襲した栂井(とがのい)家と図書属を世襲した小佐治家が紙漉座を結成して行ったが,それも地方製紙業の発達によりすたれた。

(2)近代官職制度において,1884年8月,宮内省中に置かれた部局。皇室系譜ならびに帝室の記録を編修し,内外の書籍・古器物・書画の保存および美術に関することをつかさどる。その後,幾多の変遷を経て,1949年6月,同じ省中の諸陵寮と併合,宮内庁の一部局である書陵部となり,現在に至っている。
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図書館情報学用語辞典 第5版 「図書寮」の解説

図書寮

「ずしょりょう」と読む.(1)令制のもと,中務省の中の図書・仏典・仏像の保管と共用を担当した部局.頭(かみ,長官)・助(すけ,次官)・允(じょう,判官)・属(さかん,主典)のほか,写書手・装潢手・造紙手・造筆手・造墨手が配置され,紙・墨の自給や書写作業・造本も管理した.9世紀には製紙場として紙屋院を設けたが,13世紀になると紙漉座が生じ,その座衆に依存する.明治維新で廃止.(2)1875(明治8)年出版検閲機構として内務省に設置されたもの.翌年図書局と改称.(3)1884(明治17)年宮内省に皇室系譜その他の記録編輯と書籍・古器物などの保存担当部局として設置されたもの.1949(昭和24)年陵墓の事務を併せ,宮内庁書陵部となった.蔵書に皇室関係の記録や古典籍の希書が多い.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「図書寮」の意味・わかりやすい解説

図書寮
ずしょりょう

律令制下中務省に属した役所。官の書籍の収蔵管理,国史の撰修,紙,筆,墨などの調進,宮中の仏事などを司った。長官である頭以下の四等官のほか,写書手,造筆手,造紙手,造墨手などの技術者をおいた。平安時代以降は規模も縮小され,宮中の蔵書は内裏の御文庫および壬生家の文庫などに収められていた。 1884年宮内省の一部局として復興され,皇室記録の編集,書籍の保存などを司り,30万に及ぶ貴重図書があったという。第2次世界大戦後,旧諸陵寮と合併して現在の宮内庁書陵部となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「図書寮」の意味・わかりやすい解説

図書寮
ずしょりょう

令制(りょうせい)官司の一つで中務(なかつかさ)省の被官。職員(しきいん)令によると、職掌は儒教・仏教の典籍や仏像の保管、国史の撰修(せんしゅう)、典籍の書写・表装、紙・筆・墨の支給など。職員は頭(かみ)1人、助(すけ)1人、大・少允(じょう)各1人、大・少属(さかん)各1人で、頭の官位相当は従(じゅ)五位上。そのほか写書手(しゃしょしゅ)、装潢(そうこう)手、造紙手、造筆手、造墨手などが所属。1884年(明治17)宮内省の管下に復置され、御系譜・帝室いっさいの記録の編輯(へんしゅう)、書籍・古器物の保存、美術に関することなどを管掌した。

[柳雄太郎]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「図書寮」の解説

図書寮
ずしょりょう

大宝・養老令制の中務(なかつかさ)省被管の官司。儒教や仏教の経典を中心に,宮中の書籍を管理した。国内の記録を集積して国史の編纂にもかかわり,中国から書物のかたちで輸入した情報や,国内のさまざまな情報を国家的に管理する部局でもあった。仏像を保管し宮中での法会(ほうえ)に供したほか,諸国からの進上や寮内の労働力を使って作らせた紙・筆・墨を管理し,これを諸司に分配したり,寮内で書籍を写したりした。

図書寮
としょりょう

図書寮(ずしょりょう)

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世界大百科事典(旧版)内の図書寮の言及

【図書館】より

…このような気運のもとで,多くの図書を集め多くの人の閲覧に供するという狭義での図書館も誕生することになった。聖徳太子の夢殿,大宝令の規定に見える中務(なかつかさ)省の図書(ずしよ)寮,東大寺など大寺に付設された経蔵,さらには吉備真備(きびのまきび)や玄昉(げんぼう)など知識人の私的な文庫も広義の図書館と考えることができるが,一般には石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ)が奈良の地において,私邸に阿閦(あしゆく)寺を建立し,その境内に芸亭(うんてい)と称する書斎を設け公開したものが日本における公開図書館の発祥とされる(8世紀後半)。また,菅原道真はその書斎文庫の紅梅殿(こうばいどの)を他人にも公開したといわれる。…

※「図書寮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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