(読み)かためる

精選版 日本国語大辞典 「固」の意味・読み・例文・類語

かた・める【固】

〘他マ下一〙 かた・む 〘他マ下二〙
① 柔らかいものや液状のものに手を加えてかたくする。
万葉(8C後)二〇・四四八七「いざ子どもたはわざなせそ天地の加多米(カタメ)し国そやまと島根は」
※あさぢが露(13C後)「門もしどけなく、ついぢのくづれもかためず」
② ゆるんでいるものに力を加えてかたくしめる。また、しっかり縛る。堅固にする。座がだれないようにひきしめることにもいう。
※万葉(8C後)一四・三五五九「大船を舳(へ)ゆも艫(とも)ゆも可多米(カタメ)てし許曾(こそ)の里人あらはさめかも」
※浮世草子・椀久二世(1691)下「その人にあふまではいかなるうきめにかと心をなやまし、長座敷をかためけるに」
③ 鎧、兜などの武具装束を身につける。
太平記(14C後)一「一族若党二十余人、物具ひしひしと堅(カタ)め」
④ かたく約束する。強く禁じる。
※万葉(8C後)九・一七四〇「この篋(くしげ) 開くなゆめと そこらくに 堅目(かため)しことを」
⑤ かたく守る。警備する。
※枕(10C終)一七八「ものかしこげに、なだらかに修理して、門いたくかため、きはぎはしきは、いとうたてこそおぼゆれ」
⑥ 矢を放つとき、弓を引きしぼってそのままの状態でちょっと保つ。
※保元(1220頃か)中「大矢を打ちくはせ、しばしかためて兵(ひょう)ど射る」
⑦ 国、家、会社などの状態や意見、決意など、あやふやでまとまりにくいものを、ゆるぎのない確実なものにする。しっかりしたものにする。強固にする。
※浮世草子・西鶴織留(1694)四「すこしのたくはへして、身体(しんだい)かためざるうちは妻をも持ず」
※親子(1903‐04)〈国木田独歩〉上「園子も最後の決心を固(カタ)め」
⑧ 一つの物ばかりで形づくる。ある好ましくない物事ばかりで事態に対処する。また、ある範囲、ある傾向の人たちばかりで構成する。
※浮世草子・好色万金丹(1694)二「とかく無分別でかためた男に、相手になるがうつけと」
※社会百面相(1902)〈内田魯庵投機資本も親類中から集め、役員も親類中で堅(カタ)め」
⑨ 一つにまとめる。
落語成田小僧(下の巻)(1890)〈三代目三遊亭円遊〉「多賀の丞、女虎(めとら)、三津之助、升若(しゃうじゃく)、を一緒に団固(カタメ)たやうな婦人(をんな)で」
柔道で、相手をおさえ込んで動けなくする。
レスリングで、相手の両肩を同時にマットにつける。フォールする。

かたま・る【固】

〘自ラ五(四)〙
① やわらかいものや液状、粒状のものが、かたくなる。凝固する。
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「精(くは)しく妙(たへ)なるが合(あ)へるは搏(あふ)ぎ易(やす)く、重(かさ)なり濁(にご)れるが凝(こ)りたるは場(カタマリ)(かた)し」
※古今(905‐914)雑体・一〇〇五「あられ乱れて 霜こほり いやかたまれる 庭のおもに〈凡河内躬恒〉」
② 物事の状態、基礎、また、意見、決意などが確実なものになる。しっかりと定まる。固定する。安定する。
※栄花(1028‐92頃)楚王の夢「春宮とかたまりて皆おはしましつればこそ、いかがと見奉れ」
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「是は太夫さま、御一生のかたまる時節、いそいそ遊ばせ」
③ 緊張してかたくなる。けおされて小さくなる。
梁塵秘抄口伝集(12C後)一〇「今様あらばや、只今面白かりなんかし、と勧むれば、かたまり居たり」
④ 考え方などが固定して融通がきかなくなる。ある状態から簡単に変われなくなる。
※開化問答(1874‐75)〈小川為治〉初「他の偏屈に凝結(カタマッ)て居る人より幾等の徳を得るかしれません」
⑤ 一つの物事に熱中して、他を顧みなくなる。一つの事を深く信じる。こりかたまる。
史記抄(1477)一一「儒家の一辺にかたまりて、ちいさい見を破ぶらうとて云ぞ」
⑥ 一つにまとまる。一か所に集まる。また、大勢が団結する。
※平家(13C前)五「おほくの髑髏(どくろ)どもが、ひとつにかたまりあひ、坪の内にはばかる程になって」
※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉三「隅の方に三人かたまって、何かつるつる、ちゅちゅ食ってた連中が」

かため【固】

〘名〙 (動詞「かためる(固)」の連用形の名詞化)
① 柔らかいものや、ゆるんでいるものに手を加えてかたくすること。
② かたく守ること。防備。また、守護するもの。警備するもの。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「ざえなき人は、世のかためとするになん悪しき」
※屋代本平家(13C前)二「子共あまた候へば、一方の御堅(カタ)めにはなどかならで候べき」
③ かたい約束。契り。多く、夫婦、主従などの結びつきがゆるがないように約束することにいう。
※評判記・色道大鏡(1678)一四「これらは、夕暮よりはばかる所なく外へ出れば、あひみることしげし。かためをせざるものも、折節の隙もらふ事、是常の例也」
※真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉五六「惣次郎とは固より馴染なり兄弟分の契約(カタメ)を致した花車でございますから」
④ 囲碁のヨセの古称。

かた・む【固】

〘他マ下二〙 ⇒かためる(固)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「固」の意味・読み・例文・類語

こ【固】[漢字項目]

[音](漢) [訓]かためる かたまる かたい もとより
学習漢字]4年
がっちりかたまって動かない。かたい。かたまる。「固形固体固定強固凝固堅固けんご
あくまでも。かたく。「固辞固守
融通がきかない。かたくな。「固執固陋ころう頑固
もとから。「固有
かたく閉じこめる。「禁固
(「」の代用字)ようすを表す語のあとに付ける。「確固断固
[名のり]かた・み・もと
[難読]固唾かたず

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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