土壌調査(読み)どじょうちょうさ(英語表記)soil survey

改訂新版 世界大百科事典 「土壌調査」の意味・わかりやすい解説

土壌調査 (どじょうちょうさ)
soil survey

ある広がりをもつ地域について,野外での土壌の形態的性質の調査と室内での理化学的性質の分析とによって,地域内に出現する土壌を一定の分類方式に従って分類し,それぞれの土壌の分布範囲を示す土壌図を作成する一連の作業をいう。土壌資源の合理的な利用・管理,改良・保全に資することを目的として実施される。野外調査に先立ち,地形図や空中写真,さらに地質図,土地利用図などをよりどころにして,地形地質・植生,土地利用などの違いをまんべんなくカバーするよう調査予定地点をきめる。野外で調査地点を確定すると,そこに約1mの深さの穴(試坑という)を掘って土壌断面をつくる。土壌断面はふつう地表面に平行ないくつかの土層より成っているので,各層について深さ,土色,土性(粒度区分),土壌構造斑紋,緻密(ちみつ)度,石礫(せきれき)量,根の分布,湿りそのほか必要事項を調べ記載するとともに,各層から土壌試料を採取する。野外ではそのほか調査地点の位置,地形・標高傾斜,植生・土地利用などの記録も欠かせない。採取した土壌は,物理的,化学的,鉱物学的および微形態学的方法などにより分析し,分類上の位置を定めるとともに,管理,改良対策をたてる助けにする。出現する土壌の種類がほぼわかったら,つぎにその空間的広がりを調査し,地形図を基図として土壌図に表現する。そのため野外では試坑のほか,検土杖(けんどじよう)による簡易調査や露頭観察を活用する。また空中写真や人工衛星写真から読みとれる地形,植生,土地利用情報や,写真上の濃淡紋様は,土壌の違いを反映している場合が多いので,土壌分布の推定に役だつ。土壌調査の結果は,土壌資源の特性とその分布を示すものとして幅広い応用の基礎となる。とくにそれから導かれる土壌保全・改良対策,土壌と他の諸要因を重ね合わせることにより導かれる土地分類・評価を介して,国および地方自治体の政策農家営農指針となる。そのため明治時代の土性調査(1882-1917)に始まり,それを引き継いだ施肥標準調査(1917-40),第2次大戦後になると施肥改善事業土壌調査(1953-61),国有林野土壌調査(1947-79),国土調査(1954-)など,時代の要請と調査分類法の進歩に応じ,さまざまの土壌調査が実施されてきている。

 しかし上述の土壌調査は,その調査の密度(土壌図の縮尺)や分類の精度よりみて,個別圃場(ほじよう)の不良性や個別作物の障害に対応できるほど細かくない場合がある。そこで作物生育障害の土壌要因の解明や具体的な土壌改良の目的のために,その目的にかかわる特定の性質について高い精度で調査することがあり,これを対策調査または土壌診断という。たとえば植物必須養分の欠乏または過剰,重金属元素による汚染,酸性障害,塩類濃度障害,過湿・過乾などの精密な実態把握とその対策のための調査などがそれである。
土壌
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「土壌調査」の意味・わかりやすい解説

土壌調査
どじょうちょうさ
soil survey

土壌の成因を求めて垂直断面形態を観察したり、耕地土壌の肥沃(ひよく)性を判断するために土壌の理化学性を現地で判定するなどの作業を土壌調査という。すなわち、目的に応じて調査項目はさまざまであるが、1メートルの深さの試坑をつくり、視覚、触覚、ときには味覚も加えて垂直断面の各部を観察、記載し、分析実験のための試料を各層位から採取するのが基本的調査の方法である。まず垂直断面をみて、色、構造(割れ目に注目)、植物根の入り方、母材の地質(岩盤か、砂礫(されき)か、火山灰層か)の上下方向の変わり方を観察し、比較的にそれらの性状が急変する部分に水平方向の境界線を引いて層位の区別をする。各層位ごとにやや詳細に色(色相、明度、彩度を土色帳と照合して記載)、土性(指先の触覚で)、湿り気、粘性、堅さなどを観察する。火山灰起源であるかどうかの判定のために活性アルミニウムテストを行う場合もある。水田土などグライ性土壌と思われるときには、亜酸化鉄やマンガンの存在を検する簡易定性分析を併用し、斑鉄(はんてつ)やマンガン結核の有無と程度を観察する必要がある。

 土壌断面とその下層の母材、母岩地質を崖(がけ)の露頭で調べることもたいせつであり、調査地点の密度を高めるため、または露頭や試坑の観察が不可能な場合には、1メートルないし1.5メートルの検土杖(じょう)を用いて簡易ボーリングを行う。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]

『日本ペドロジー学会編『土壌調査ハンドブック』改訂版(1997・博友社)』

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