在国司(読み)ざいこくし

精選版 日本国語大辞典 「在国司」の意味・読み・例文・類語

ざい‐こくし【在国司】

〘名〙 平安後期・鎌倉時代の在庁職の一つ不在の多い国司に対して、在国している官人。平安中期以降、国司の遙任化に伴い、国衙にあって国司のごとく勢威をふるった者を在国司と称したことがあるが、これが豊後肥前薩摩石見などでは固定して在庁官人職名となった。
※内閣文庫所蔵美濃国古文書‐延久三年(1071)八月一一日・美濃国司解案「抑御庄内於大井御庄者、在国司雖訴申事、任官符旨、不是非免除了」

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改訂新版 世界大百科事典 「在国司」の意味・わかりやすい解説

在国司 (ざいこくし)

平安末期から鎌倉時代にかけて散見する在庁職。多く有力な在庁官人が帯有した。その実態については不明な部分も多く判然としないが,日向・豊後の日下部(くさかべ)氏,筑前の草野氏,薩摩の大前(おおくま)氏,あるいは石見の藤原氏などおもに西国地域の在庁層に散見する。在国司の淵源は,国司の遥任化が進展する平安中期以降,不在がちの国司に対して,在国する国司を指す呼称であると考えられている。《左経記》長元4年(1031)6月11,12日条や《行親記》長暦1年(1037)5月20日条に見える在国司の事例は,そうした意味での早い例である。平安末期になると上述の意味とは別に有力在庁官人の呼称としての在国司の例が多く見られ,相伝所職として在庁の帯有するところとなる。在庁官人一般を統轄する,いわば在地における有勢者としての側面から在国司の呼称が用いられるに至ったものである。鎌倉時代の説話集《十訓抄》には陸奥国をその武威によって支配した藤原基衡が在国司と呼ばれたことが見えているが,これも基衡が国司にも匹敵する在地の実質的権力を保有していたためであろう。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「在国司」の意味・わかりやすい解説

在国司
ざいこくし

平安,鎌倉時代の在庁職の一つ。初めは遙任国司に対して在国する国司をいったが,平安時代末期には,国司に代って実力をもつ在庁職をいうようになった。

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