地図状舌(読み)ちずじょうぜつ(英語表記)Geographic tongue

六訂版 家庭医学大全科 「地図状舌」の解説

地図状舌
ちずじょうぜつ
Geographic tongue
(口・あごの病気)

どんな病気か

 舌のところどころに、あたかも地図のような模様ができることから、このような名前がついています(図14)。小児や若い女性に多くみられます。

原因は何か

 原因についてはよくわかっていません。ビタミンB群不足やストレスなどが関係している場合もあるとされているので、バランスのとれた食事や、過労を避けた規則正しい生活を心がけることが大切です。

症状の現れ方

 最初は舌の一部に円形または楕円形で、中央部がうすい赤色、周辺が白色(はん)ができます。それらが次第に大きくなり、やがて隣り合った斑同士が融合して、全体として地図のような模様を形づくるようになります。この地図状の模様は、日によって変化するのが特徴で、数週間で消えてしまう場合もありますが、数カ月~数年間にわたってみられることもあります。

 自覚症状はほとんどないか、あっても少ししみる程度です。時に溝状舌(こうじょうぜつ)を合併していることがあります。

治療の方法

 自覚症状がない場合は特別な治療の必要はありませんが、一度歯科医師の診察を受けておくと安心でしょう。

 食べ物がしみたりする場合は、刺激物を避け、口腔用のステロイド軟膏(アフタゾロン口腔用軟膏など)を用います。また、ビタミンB群の内服や、うがい薬でよくうがいをして口腔内を清潔に保つことにより、症状が改善する場合も多くみられます。

里村 一人


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「地図状舌」の解説

ちずじょうぜつ【地図状舌 Geographic Tongue】

[どんな病気か]
 舌の中央部や舌の辺縁部(ふち)に、不整で境界の明瞭(めいりょう)な円形や楕円形(だえんけい)の赤い斑点(はんてん)が見られる状態で、1個できることもあれば多数できることもあります。
 大きさは数mmから数cmとさまざまで、ふつう、薄い白色の隆起で周囲の正常な粘膜(ねんまく)と隔てられています。
 さらに、病変部分は互いに癒合(ゆごう)して地図状に見え、また、日によって形や位置が変わることが特徴で、移動性舌炎(いどうせいぜつえん)と呼ばれることもあります。
 病変は、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)という舌の表面の細かい突起が剥脱(はくだつ)して(はがれて)できたものです。ふつうは、痛みや味覚障害などの自覚症状はありません。
 発生率は、人口の1~2%といわれ、すべての年代でみられますが、若干、女性が多くなっています。
[治療]
 原因は不明ですが、遺伝的要因、心因的要因、アトピーなどとの関連性が指摘されています。
 数週から数か月、ときには何年も存在することがありますが、とくに治療する必要性はありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地図状舌」の意味・わかりやすい解説

地図状舌
ちずじょうぜつ

主として小児の舌に地図状の病変をおこす疾患で、地図舌ともいわれる。消化不良に伴っておこることが多いが、遺伝、異常体質、滲出(しんしゅつ)性素因、神経性素因なども関係があるとされている。舌粘膜の病変は一過性であり、絶えずその位置、形が変わるのが特徴であるため、良性移動性舌炎、遊走疹(しん)とよばれることもある。上皮の角化症、壊死(えし)、剥離(はくり)、および粘膜下の水腫(すいしゅ)、慢性炎症所見などがみられるため、舌は黄色で縁どられた不規則な紅斑(こうはん)を呈し、地図状の表現に相当する肉眼的所見を示す。舌の背部、後方側縁部に好んで発生するが、痛みはなく、また特別の治療を必要としないといわれている。

[渡辺 裕]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地図状舌」の意味・わかりやすい解説

地図状舌
ちずじょうぜつ
geographical tongue

皮膚や粘膜が特に敏感なアレルギー性体質の幼児に多発する,舌背の淡紅色または灰白色の地図様の隆起。舌炎,口内炎を続発しやすい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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