地押(読み)じおし

精選版 日本国語大辞典 「地押」の意味・読み・例文・類語

じ‐おし ヂ‥【地押】

〘名〙 江戸時代、検地仕法の一つ。一村内の地目に変動が多く、また田地持主の交替のはげしい村方からの要請によるか、または領主が村内の隠田(おんでん)を摘発する意図のもとに行なわれる再検地であるが、地押では田畑等級や高・石盛(こくもり)を修正することなく、反別・名請人の異同を正し、隠田を高付けすることに重点がおかれた。地詰(じづめ)
随筆・折たく柴の記(1716頃)下「たとひ此のちに、地押などいふ事ありとも」

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改訂新版 世界大百科事典 「地押」の意味・わかりやすい解説

地押 (じおし)

江戸時代検地の一種で,地詰(じづめ)ともいった。丈量の方法は検地と同じであるが,田畑・屋敷地の品位・斗代(とだい)は従前のままとし,単に縄・竿を入れて実際の面積を測り従前の検地帳記載面積とのくいちがいを修正する略式の検地をいう。その結果を記した帳簿地押帳または地詰帳といい,記載様式は検地帳と同様である。地押は隠田(おんでん)の告訴があった場合,事故があって村方から願い出があった場合,あるいは論争となった土地を実検する必要が生じた場合などに行われた。その場合1~2耕地程度の小規模であれば廻り検地(惣まわりを絵図にうつし反別を改める方法)ですませた。明治政府は1873年公布の地租改正条例に基づいて,それまでまちまちであった物納貢租を全国一律の金納地租に統一・改定する政策をすすめたが,改正後も開墾・地目変換などによって帳簿と実地とのくいちがいが多く,大蔵省は85年より4ヵ年の歳月をかけて大規模な地押調査を行い,土地台帳を完成させた。
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百科事典マイペディア 「地押」の意味・わかりやすい解説

地押【じおし】

江戸時代,地詰(じづめ)ともよばれた略式の検地。田畑の品等や石盛(こくもり)は従前のままとし,反別(たんべつ)を測量しなおすことで,検地帳の記載を修正する。その結果は地押帳・地詰帳として記録される。田畑を所持する百姓の移動が多かったり,地目の変動が激しかったり,また境相論(そうろん)となって実検が必要になったりなど村方から要請されて竿入れが行われる場合,あるいは領主側が隠田(おんでん)を摘発するために実施する場合などがある。ただし本来の検地をも地押という例もあり,わずかの耕地の場合は廻り検地をもって代えた。1885年大蔵省により大規模の地押調査が実施され,地租改正事業を完了させた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地押」の意味・わかりやすい解説

地押
じおし

田畑屋敷を測量して従来の段別を修正すること。地詰(じづめ)、地撫(じなぜ)、地坪(じならし)ともいう。方法は検地と同じであるが、ただ田畑屋敷の等級・分米(ぶんまい)などは従来のままとし、単に竿入(さおいれ)して面積を丈量し従来の段別を改めるのみで、その結果をまとめたものが地押帳である。地押は江戸時代に隠田(おんでん)の疑いがある場合、川成(かわなり)(洪水による荒地化)などで地所が紛乱した場合などに広く行われた。明治政府も地租改正の際に地押を行い、さらに1885年(明治18)から4年にわたって大規模な地押調査を行っている。

[宮川 満]

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世界大百科事典(旧版)内の地押の言及

【検地】より

…各藩で大名が領内を独自に検地するのを内検といったが,その場合でも問題があれば勘定奉行に伺をたてた。正規の検地のほかに,竿入をせずに見計いによって古検の村高に一定の増高をつけて無地増高とする検地を居検地,品位・斗代は従来どおりとして面積のみ測量し修正する略式の検地を地押または地詰,部分的な対象地をこまかく区分した絵図に作って反別をただす検地を廻り検地,境界争論などによって行う検地を論所検地といった。また検地は麦・稲の刈入れ後に行われることが多く,季節によって春検地と秋検地の別があり,春検地はその年から,秋検地は翌年から高に組み入れられるのが通例であった。…

※「地押」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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