地方銀行の経営統合(読み)ちほうぎんこうのけいえいとうごう

知恵蔵 「地方銀行の経営統合」の解説

地方銀行の経営統合

近年本店がある地域の企業や個人を中心に取引を行う地方銀行、第二地方銀行(地銀)が、地域の他の銀行との経営統合や業務提携に踏み切るケースが相次いでいる。人口減少や過疎化に伴う顧客減少や、超低金利の長期化による利ざや(貸出金利預金金利の差)の縮小、ゆうちょ銀行をはじめとした他の金融機関との競合などから経営環境が厳しくなり、経営統合や業務提携によってコスト削減などを進めようとする動きが目立っている。
金融庁の資料によると、2018年11月現在、第二地銀も合わせて約100行の地銀がある。経営が安定している地銀がある一方で、経営環境が厳しい地銀もある。2019年8月に金融庁が発表した金融行政方針によると、19年3月期決算では、地銀105行中、45行が連続赤字となり、そのうち27行が5期以上の連続赤字となっている。また、日本銀行は、19年春に公表したレポートで、2028年度には地銀の約6割が最終赤字になるという試算を示した。
近隣の地銀同士で経営統合するメリットとして、支店の共同化などで、システムや支店の維持費、人件費といった経営コストが削減できることや、競合していない営業エリアや事業領域を補完できることなどが挙げられる。しかし、行風や経営システムの違いなどが、統合の障害となるケースもある。
2018年には、りそなホールディングス子会社である近畿大阪銀行(大阪)と、三井住友フィナンシャルグループ(FG)傘下関西アーバン銀行(大阪)とみなと銀行(兵庫)の3行が統合した「関西みらいFG」や、共に新潟県内を地盤とする第四銀行と北越銀行の統合による「第四北越FG」など、四つの経営統合があった。19年4月には、ふくおかFG(福岡、長崎、熊本)と十八銀行(長崎)が統合した。両行は、2016年2月に統合方針を発表していたが、統合によって長崎県内のシェアが約7割に高まることから公正取引委員会が難色を示していた。このため、貸出債権を他の金融機関に譲渡して長崎県内のシェアを下げることで、公正取引委員会から承認を得て、統合を実現した。また、19年7月、関東の地銀で、預金量全国首位の横浜銀行(神奈川)と2位の千葉銀行(千葉)が営業部門を中心とした業務提携を発表した。両行の個人顧客数は合わせて約930万人、神奈川、千葉両県の総人口の6割に達するという地銀大手行同士の提携は注目を集めた。
政府も、地銀の経営統合を後押しする。ふくおかFGと十八銀行の統合のケースを踏まえ、2019年6月に閣議決定された成長戦略実行計画には、銀行と乗り合いバスを対象に、独占禁止法の適用を除外し、シェアが高くなっても特例的に経営統合を認める特例法案の国会への提出を盛り込んだ。特例法は10年間の時限措置を導入し、集中的に地銀の再編を促す。

(南 文枝 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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