地狂言(読み)じきょうげん

精選版 日本国語大辞典 「地狂言」の意味・読み・例文・類語

じ‐きょうげん ヂキャウゲン【地狂言】

〘名〙
能狂言で、舞、囃子(はやし)のあしらいを伴わない、台詞(せりふ)本位狂言。また、歌舞伎狂言のうち、舞踊本位の所作に対して、台詞本位の部分をいう。地芸(じげい)
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第三八「落所見よ神鳴の露 地狂言罷出たる月の影」
※浮世草子・元祿大平記(1702)八「芳沢あやめ、地狂言(ヂキャウゲン)水木におとらず、うれひ事、やつし事よくこなし侍る」
素人の演ずる狂言。
※俳諧・西鶴大句数(1677)三「足ひゃうしいてのとけたる地狂言 便桶ひらけなけ渡し橋」
③ その土地芝居。地方の芝居好きが、人々に見せるため演ずるもの。素人芝居。地芝居。《季・秋》
歌舞伎・出来龝月花雪聚(真田幸村)(1871)三幕「地狂言(ヂキャウゲン)でした忠臣蔵の師直がいふせりふぢゃあねえが」

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デジタル大辞泉 「地狂言」の意味・読み・例文・類語

じ‐きょうげん〔ヂキヤウゲン〕【地狂言】

舞踊本位の所作事に対して、せりふ本位の歌舞伎狂言。地芸。
素人の演じる狂言。
その土地の芝居。地方の芝居好きが農閑期の盆や祭礼などに演じるもの。村芝居草芝居。地芝居。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地狂言」の意味・わかりやすい解説

地狂言
じきょうげん

地方の人々によって行なわれる歌舞伎芝居のこと。地芝居,草芝居,村芝居,田舎芝居と同じ。農閑期や祭礼などの際にその土地の若者を中心に演じられてきた。古くからあったが,文化文政期 (19世紀初頭) に普及し,江戸末期から明治にかけて最も盛んであった。神社境内などに恒久的な舞台をつくって演じたものが多いが,臨時の掛け小屋でも行なわれた。第2次世界大戦後は新しい大衆芸能の進出で急激に衰えた。山形県酒田市黒森,愛知県設楽町田峰 (だみね) ,香川県土庄町肥土山 (ひとやま) などのものが知られる。

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世界大百科事典(旧版)内の地狂言の言及

【地芝居】より

…農村を中心に,その土地の人々の演ずる芝居(歌舞伎)。地狂言,村芝居ともいう。ただし,〈地狂言〉は歌舞伎の所作事(舞踊)に対する地芸(せりふによる演技),または素人の演ずる狂言を意味する場合と区別されねばならず,〈村芝居〉は職業的な旅回りの一座による芝居を指すこともある。…

※「地狂言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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