地紙売(読み)じがみうり

精選版 日本国語大辞典 「地紙売」の意味・読み・例文・類語

じがみ‐うり ヂがみ‥【地紙売】

〘名〙 江戸中期、だてな衣装を着、地紙形の箱をかついで、扇の地紙を売り歩いた者。地紙屋。地紙。《季・夏》
談義本・華鳥百談(1748)五「夏は地紙売が弁当の饐(すへ)るをあふいで」

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改訂新版 世界大百科事典 「地紙売」の意味・わかりやすい解説

地紙売 (じがみうり)

扇の地紙を売り歩いた商人。地紙は扇または傘にはる紙をいい,扇地紙は扇形に切った紙で,これを折って扇にはった。滝沢馬琴の《燕石雑志》(1811)や小川顕道の《塵塚談》(1814)によると,天明(1781-89)初年ころまで,夏になると江戸の町に見られたようである。地紙形の箱を五つ六つ肩にかつぎ,買手と値段が折り合うとその場で折って売った。放蕩(ほうとう)のはて親に勘当された道楽息子などが多かったらしく,はでな服装をして役者声色物まねをして売り歩いたという。京都製の扇子が江戸の庶民にも行き渡ると,それまでのようにだてな扇を持つ人がなくなり,地紙売も見られなくなったようである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地紙売」の意味・わかりやすい解説

地紙売
じがみうり

江戸時代,扇の地紙を売り歩いた行商人で,求めに応じて古扇の紙を張替えた。特に元禄 (1688~1704) 頃に盛んで,商売姿が伊達で,俳優の声色や浮世物真似などで庶民に人気があったといわれる。なかには男色を売る者もあった。京都製の扇が江戸市中で安く買えるようになった寛政 (1789~1801) 以降,次第に衰えた。

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